コラム

障害基礎年金請求の流れと受給について解説・不支給決定には審査請求が可能です

障害年金とは

障害年金とは、病気やけがで仕事や生活などが制限される方が受給できる公的な年金制度です。

精神障害や発達障害、身体障害など障害のある方が対象となります。

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2つの種類があり、初診日に国民年金に加入していた場合は障害基礎年金の受給対象となります。

この記事では障害基礎年金の受給について解説します。

障害年金の対象者

障害年金の対象となる障害は視覚障害や聴覚障害、肢体不自由などの障害だけでなく、長期療養が必要ながんや糖尿病、心疾患、呼吸器疾患などの内部疾患、または統合失調症などの精神の障害により、仕事や生活が著しく制限を受ける状態になったときなども含まれます。

以下のような障害が、対象となります。

精神障害
統合失調症、うつ病、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害 など

外部障害
視覚障害、聴覚障害、肢体の障害 など

内部障害
呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がん など

障害基礎年金の受給要件

障害基礎年金の受給要件は、初診日が国民年金に加入していることです。

20歳未満(国民年金に加入する義務がない年齢)または日本国内に住んでいる60歳~65歳未満の方で年金制度に加入していないうえで、初診日の前日に保険料納付要件を満たしている(20歳未満の方は不要)

障害認定日または20歳到達時に、障害の状態が障害等級表に定める1級または2級に該当するという受給要件を満たす必要があります。

障害年金の受給ポイント

障害基礎年金をもらうには初診日、保険料納付要件、障害認定要件の3つの要件を満たしている必要があります。

初診日

初診日とは、その障害の原因となった病気やけがで初めて病院で診察を受けた日のことです。

この後、紹介する保険料納付要件と障害認定要件の基準日になります。

初診日は診察を受けた病院の証明が必要になります。

現在通院している病院と初めて受診した病院が違う場合は、初めて診察を受けた病院に確認が必要です。

電話で「初診の証明書をください」と言えば対応してもらえる場合が多いです。

初めて受診した病院が廃院となっている、または当時のカルテが残っていないなどの場合は第三者証明書類や本人が持っている参考資料(診察券やお薬手帳、障害者手帳の診断書など)を添付して、初診日の申し立てをします。

保険料納付要件

保険料納付要件は初診日の前日において、初診日がある月の2ヶ月前までの被保険者期間で、保険料の納付済み期間と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることです。

ただし、初診日が令和8年3月末日までの場合は、以下の特例要件が適用されます。

  • 初診日において65歳未満であること
  • 初診日の前日において、初診日がある月の2ヶ月前までの1年間に保険料の未納がないこと

初診日より以前にさかのぼって保険料を納付していることが必要になります。

けがや病気などが生じてから納めても保険料納付要件を満たせないため、保険料の納付は忘れず行うようにしましょう。

障害認定要件

初診日から1年6ヶ月を経過した日、または1年6ヶ月以内に治った日を障害認定日といいます。

障害認定日に一定以上の障害の等級になっていることが障害年金受給の要件となります。

そのため、障害があってもすぐ障害年金を申請できるわけではなく、1年6ヶ月経過するか症状が固定してから申請する必要があります。

※障害認定日に障害状態に該当しなかった場合でも、その後症状が悪化し、一定以上の障害の等級に該当した場合は事後重症という形で申請ができます。(65歳になる前々日までに請求する必要があります)

障害年金の受給金額は、加入している年金の種類や障害等級によって異なります。また配偶者や子どもがいる場合はそれぞれ一定の額が加算されます。

障害年金の等級について

障害年金の等級は障害の程度によって基準が定められています。

障害基礎年金の等級は1級と2級があり、1級が重いです。

受給金額も同様に1級が高くなります。

障害年金の等級は独自に定められています。

障害年金の等級と障碍者手帳の等級

障害者手帳の等級と障害年金の等級は別のものです。

障害者手帳を持っているから、障害者手帳の等級と障害年金の等級が同じになるわけではありません。

例えば精神障害のある方で、精神障害者保健福祉手帳の等級が3級となっていても、障害年金の等級は2級となる可能性があります。

障害年金の申請に障碍者手帳は不要です。

障害基礎年金の受給金額

障害基礎年金は等級によって受給金額が決まっています。

また、受給金額は年度によっても変更がありますが、令和5年度の受給金額は1級が年額約100万円、2級は年額約80万円です。

また、子どもがいる場合には、2人目までは1人につき年額約23万円が加算されます。

なお、障害年金の加算対象となるのは18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級の1級、2級の状態にある子です。

障害年金をもらえる期間

障害年金は一度支給決定したらずっと支給が続く永久認定と、一定期間ごとに更新手続きが必要な有期認定があります。

永久認定となるのは障害の程度が変わらないと認められた場合で、原則として障害等級も固定となり更新申請の必要はありません。

有期認定となるのは障害の程度に変化があると認められた場合です。

更新時期が来たら更新するための申請をおこない、新たに審査を受ける必要があります。

更新申請の審査で障害等級に該当した場合、引き続き障害年金を受給できます。

もし審査の結果で障害等級に該当しない場合は支給が停止されます。

あくまで支給停止のため、受給権そのものはなくなりません。

その後、再度申請をおこない、障害等級に該当していると認定された場合は障害年金の受給が再開される場合があります。

障害年金を申請から支給までの流れ

障害年金の申請をするタイミングは「障害認定日による請求」と「事後重症による請求」があります。

障害認定日による請求は、障害認定日に一定以上の障害等級に該当する場合に申請をします

事後重症による請求は、障害認定日以後にけがや病気が悪化して一定以上の障害等級に該当した場合に申請をします。

それぞれ申請可能な状態になった後に、必要な書類をそろえたうえで障害年金を申請します。

申請するために必要な書類

障害年金の申請には、以下の書類が必要になります。

  • 年金請求書
  • 基礎年金番号通知書や基礎年金番号が分かる書類
  • 本人の生年月日が明らかに分かる書類(住民票や戸籍謄本など)
  • 医師の診断書
  • 受診状況等証明書
  • 病歴・就労状況等申立書
  • 受取先金融機関の通帳など

また、加算対象者がいる場合は、さらに子の在学証明書や配偶者の所得証明書なども必要となります。

そのほかにも書類が必要になることがありますので、事前に年金事務所などで確認しましょう。

申請の流れ

お近くの年金事務所に障害年金の申請について相談し、申請に必要な書類について確認します。

申請に必要な書類をそろえた後は年金事務所や自治体の窓口で申請を行います。

申請後は審査が始まり、障害年金の受給が認められた場合に年金証書が自宅に送付されます。

不支給となった場合は、不支給決定通知書が自宅に送付されます。

申請してから支給されるまでの期間

申請から審査結果が出るまで約3ヶ月、自宅に年金証書が送られてから初回の振り込みが行われるまでは1~2ヶ月かかります。

申請から時間がかかることをあらかじめ理解しておきましょう。

障害年金の支払いは2ヶ月に1回、偶数月に2ヶ月分が振り込まれます。

働きながらでも障害年金は受給できます

障害年金の受給要件には働いているかどうかは含まれておらず、働いていても障害年金が支給停止になるわけではありません。

実際に働きながら障害年金を受給している方もいます。

働きながら障害年金を受給できるかどうかはさまざまな要因により決まりますので、気になる方は年金事務所や社会保険労務士などにご相談ください。

受給申請したが、不支給の決定 納得いかない場合

障害基礎年金の申請に対して不受給の決定となったり、更新の際に不支給になることがあります。

この決定に納得がいかない場合、審査請求が可能です。

審査請求は不支給などの決定を知った日から3ヶ月以内におこないます。

その決定に対して納得がいかない場合には、決定を知った日から2ヶ月以内であればさらに再審査請求をおこなうことも可能です。

審査請求をすることで決定が覆ることもありますので、納得がいかないという場合には検討してみるといいでしょう。

手続きが不安な方は社会保険労務士に相談を

障害年金の申請には様々な書類や手続きが必要です。

一人で申請手続きを進めていくのが難しい、大変そうだと感じた方は、社会保険労務士(社労士)に相談する手段もあります。

社会保険労務士は法律(年金)の専門家なので、必要な書類の準備から申請手続きなど、多くの手続を代行してくれます。

不安な方は、お住いの地域で障害年金申請に強い社労士を探してみることをおすすめします。

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