憲法で定められている国会議員の特権について、法律初学者の方向けにわかりやすく解説します。
※公務員試験、行政書士試験の勉強をしている方向けに書いています。
国会議員の特権は試験範囲になります。捨ててはいけないテーマです。
地方議員の判例も必要になる問題が出てくることがあるので、地方議員についても知ることになります。
免責特権とは
免責特権とは、憲法上、国会議員は、議院で行った演説・討論・表決について、院外で責任を問われない特権のことです。(憲法51条)
なぜこのような特権が認められているのかというと、
国会議員が議院で自由に発言ができなければ、使命を果たすことが困難になるからです。
国会議員は民意で選ばれているわけですから、議員が発言を抑制されて使命を果たせないのは非常にまずいのです。そのために免責特権があります。
免責特権の及ぶ範囲
免責特権は「両議院の議員」に認められます。
衆議院であると参議院であるとを問いません。
また、文書によるものでも免責特権が認められます。
憲法51条にいう「議院」は、場所的概念ではなく機能的概念とされています。
したがって、国会議事堂内で開かれたとしても政党の集会、会合は51条の「議院」ではないとされています。
「議院」には本会議のほか委員会や協議会等も含まれ、会期中か会期外を問わず、また、参議院の緊急集会もこれに含まれるとされています。
暴行・傷害・公務執行妨害等の犯罪行為は一般的には対象から除外されると解されています。
国会議員が議院証言法において証人喚問されて行った証言も免責は働かないと解されています(1976年9月8日衆議院ロッキード問題に関する調査特別委員会における衆議院法制局長答弁)。
地方議員に免責特権は認められない
憲法51条はあくまで国会議員の免責を認めたもので、地方議員に対しては、免責特権は認められません。
佐賀県議会事件の最高裁判決(最大判昭和42年5月24日)では、
「憲法五一条に、いわゆる免責特権を与えているからといつて、その理をそのまま直ちに地方議会にあてはめ、地方議会についても、国会と同様の議会自治・議会自律の原則を認め、さらに、地方議会議員の発言についても、いわゆる免責特権を憲法上保障しているものと解すべき根拠はない」
として、憲法51条を根拠に地方議会の議員の免責特権を認めることはできないとしています。
最高裁判決 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50706
免責特権の効果
免責特権の効果は、院外で責任を問われないことです。
通常であれば負うべき法的責任(民事上の不法行為責任や刑事上の訴追など)が免責され、
刑事訴追された場合、裁判所は免責特権の対象となる発言であると認めるときは公訴を棄却します(刑事訴訟法第339条1項2号)。
院外において政治上・道義上の責任について追及されることはありえます。
国会議員が所属する政党等に政治責任が追及され処分が行われることもありえます。
また、本条は「院外」での免責を認めるものであって、国会議員には規則・紀律に従う義務がある以上、院内においては本条と無関係に懲罰事犯の対象となりえます(日本国憲法第58条第2項)。