刑事告発について解説します。刑事告発は、犯罪の被害者ではない第三者が、捜査機関(警察や検察)に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める法的な手続きです。告訴とよく比較されるため、違いを意識しながら解説していきます。
1. 刑事告発とは
刑事告発とは、告訴権者(通常は被害者)および犯人以外の第三者が、捜査機関に対し、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。簡単に言うと、「被害者ではない人が、犯罪を見つけて警察などに知らせ、処罰を求めること」です。
例えば、会社の従業員が会社の金を横領しているのを発見した同僚が、警察にその事実を知らせ、処罰を求める場合などが告発に該当します。
2. 告訴との違い
告発とよく似た制度に「告訴」があります。主な違いは、告発を行う人の立場です。
- 告訴: 犯罪の被害者、または法律で定められた一定の者(告訴権者)が行う。
- 告発: 告訴権者および犯人以外の第三者、つまり誰でも行うことができる。
以下の表で違いをまとめます。
項目 | 告訴 | 告発 |
---|---|---|
行う人 | 被害者または法律で定められた者(告訴権者) | 告訴権者および犯人以外の第三者(誰でも) |
目的 | 犯人の処罰を求める | 犯人の処罰を求める |
法的効果 | 捜査機関は捜査を行う義務を負う | 捜査機関は捜査を行うかどうか判断する |
取り下げ | 原則として告訴の取り消しはできない | 自由に撤回できる |
3. 告発の方法
告発は、告訴と同様に、口頭または書面(告発状)で行います。
- 口頭告発: 警察署などで警察官に犯罪事実を説明し、告発する意思を伝える方法です。警察官が告発調書を作成します。
- 書面告発(告発状): 告発状を作成し、警察署や検察庁に提出する方法です。告発状には、告発者の情報、被疑者(犯人)の情報(分かっている範囲で)、犯罪事実、処罰を求める意思などを記載します。
告発状の作成は、弁護士に依頼することも可能です。弁護士に依頼することで、法的要件を満たした適切な告発状を作成することができ、告発が受理されやすくなる可能性があります。
4. 告発の流れ
告発の流れは、告訴とほぼ同じです。
- 告発: 告発者が捜査機関に告発を行います。
- 捜査: 捜査機関は告発を受けて捜査を開始します。ただし、告訴と異なり、捜査機関は必ず捜査を開始する義務を負うわけではありません。
- 送致: 警察は捜査結果を検察に送致します。
- 起訴・不起訴: 検察は捜査結果に基づいて起訴または不起訴を決定します。
- 裁判: 起訴された場合は、裁判が行われ、有罪・無罪の判決が下されます。
5. 告発のメリット
- 犯罪の発見・抑止: 被害者以外の人も犯罪を知らせることができるため、犯罪の早期発見や抑止につながります。
- 公益の実現: 被害者ではない人が、社会全体の利益のために犯罪を告発することで、公益の実現に貢献できます。
6. 告発のデメリット
- 捜査が開始されない可能性: 告訴と異なり、告発を受けた捜査機関は必ず捜査を開始する義務を負うわけではありません。証拠が不十分な場合などは、捜査が開始されない可能性もあります。
- 虚偽告発のリスク: 事実に基づかない告発(虚偽告発)を行った場合、罪に問われる可能性があります。
7. 告訴と告発の使い分け
基本的には、
- 被害者本人が処罰を求める場合は「告訴」
- 被害者以外が処罰を求める場合は「告発」
となります。
8. まとめ
刑事告発は、被害者以外の人も犯罪を知らせ、処罰を求めることができる重要な制度です。告訴と混同しやすいですが、行う人の立場が異なることを理解しておきましょう。
犯罪を発見した場合、告発を検討することも、社会全体の犯罪抑止に繋がる重要な行為と言えるでしょう。