行政法判例

大阪国際空港公害訴訟について解説(最大判昭56年12月16日)

大阪国際空港公害訴訟

概要

大阪国際空港公害訴訟は、1970年代から1980年代にかけて、大阪国際空港(伊丹空港)周辺住民が起こした公害訴訟です。

原告は、航空機騒音による健康被害や生活妨害を訴え、国と航空会社に対し、損害賠償と夜間・早朝の飛行差し止めを求めました。

この訴訟は、大規模な集団訴訟として注目を集め、長期にわたる審理が行われました。  

法的根拠

原告住民側は、国家賠償法1条1項に基づき、国が設置・管理する大阪国際空港の設置・管理に瑕疵があり、その瑕疵により航空機騒音が発生し、精神的・肉体的被害を受けたとして、国に損害賠償責任があると主張しました。

また、民法709条に基づき、航空機の飛行差止めを求めました。  

争点

本訴訟の主な争点は、以下の3点。

  1. 航空機騒音が受忍限度を超えているか否か
  2. 騒音による健康被害と因果関係が認められるか否か
  3. 民事上の請求として航空機の飛行差し止めは認められるか

判決内容

最高裁判所は昭和56年(1981)年12月16日、原告の請求を棄却しました。

判決では、航空機騒音は社会生活上受忍限度内であり、健康被害との因果関係も認められないと判断しました

また、航空機の飛行差し止めについては、空港整備法2条1項2号所定の第二種空港を民間航空機の離着陸に使用させることの差止めを求める訴えは、不適法であるとしました。 これは、空港の公共性と安全運航の確保を重視した判断と言えます。  

その後

大阪国際空港公害訴訟は、日本の空港訴訟における重要な判例となり、その後の訴訟にも大きな影響を与えました。

特に、航空機騒音の受忍限度や飛行差し止めの可否に関する判断は、その後の裁判で繰り返し参照されています。

最高裁判所は、航空機騒音は、社会生活上受忍すべき限度を超えない限り、違法ではないとし、騒音による損害を賠償する必要はないとの判断を示しています。

この判決は、騒音被害の立証責任を原告側に負わせるものであり、その後の空港訴訟において、原告側が騒音と健康被害との因果関係を立証することの難しさを示すものとなりました。

しかし、この判決は、騒音被害の実態を軽視しているとの批判もあり、空港周辺住民の不満は解消されませんでした。

結果として、大阪国際空港公害訴訟は、空港周辺の騒音問題に対する社会的な関心を高め、国による騒音対策の強化や空港周辺整備の促進につながったという点で、一定の意義を持つと言えるでしょう。  

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