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事件概要

事件名
判決日平成17年7月15日
サクッと結論医療法の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる
裁判所判例URLhttps://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52373

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事案

Aは富山県高岡市内において病院の開設を申請し、富山県知事に対して、病院開設に係る医療法に基づく許可の申請をした。

これに対し富山県知事は、高岡医療圏における病院の病床数が、県の地域医療計画に定める当該医療圏の必要病床数に達していることを理由として、本県申請に係る病院の開設を中止するよう勧告。

Aは富山県知事に対し本件勧告を拒否するとともに、速やかに本県申請に対する許可をするよう求める文書を送付。

富山県知事はAに対し、本件申請について許可する旨の処分をするとともに、富山県厚生部長名で、Aに対し、中止勧告にもかかわらず病院を開設した場合には、保健医療機関の指定の拒否をする旨の通告をした。

それを受けたAは、本件勧告は(旧)医療法30条7に反するもので違法であり、また、本件許可処分は本件勧告に従わない場合には保健医療機関の指定申請を拒否することを予告する負担付きの許可であると主張して、富山県知事に対し、勧告の取り消し又は本件通告部分の取り消しを請求した。

判旨のポイント

…医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は,医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども,当該勧告を受けた者に対し,これに従わない場合には,相当程度の確実さをもって,病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。

そして,いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては,健康保険,国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく,保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから,保険医療機関の指定を受けることができない場合には,実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。
このような医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると,この勧告は,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である

—-判決文(平17年7月15日)より