行政作用法 代執行について、法律初学者の方向けにわかりやすく解説します。
私は、以下の3つの過去問集
- 公務員試験過去問集(スーパー過去問ゼミ・資格試験研究会出版)
- 行政書士試験過去問集(合格問題集&肢別過去問題集・東京リーガルマインドLEC出版)
- 司法試験過去問集(体系別短答式過去問集・早稲田経営出版)
を解いてきました。
その経験から言うと、代執行は どの試験でも出題されうるので、捨ててはいけないテーマです。
また、行政の他の履行確保手段との差異を問うてくる問題が多い印象です。
それぞれの特徴を比較しつつ学習することをおすすめします。
⚠️わかりやすさ重視で書いているため、条文を平易な表現にしています。六法を参照しながらお読みください。
代執行とは
代執行とは、代替的作為義務が履行されない場合、行政機関がみずから義務者のすべき行為をし、または第三者にさせ、かかった費用を義務者から徴収することをいいます。
すごく簡単に表現すると、
「公益を害する事態がある場合、それを改善するために、行政がまず本人に是正通知をし、それがされなかった場合に、行政が自分で解決する」
ことです。
行政代執行の要件
行政代執行の要件は、以下の3つです。
・法律(条例や規則を含む)により直接命ぜられ、または法律に基づき行政庁により命ぜられた行為(代替的作為義務)について義務者がこれを履行しないこと
・他の手段によってその履行を確保することが困難であること
・その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときであること
代替的作為義務というのは 義務者以外の者が義務の内容を実現しても行政目的が達成可能な義務をいいます。
行政代執行の例
行政代執行の要件が代替的作為義務、義務の不履行、義務不履行放置の著しい公益反といわれても、イメージが湧きにくいと思います。
この3つの要件について、老朽建物を用いた具体例を作ってみました
①建物甲は老朽化が著しく、全体的に破損し、屋根や壁の剥離が見られ、建物全体が歪んでおり、放置すると隣家を巻き込んで倒壊するおそれがある
②隣家の住人Aは、甲の所有者Bに対し修繕するよう求めたが、所有者は半年ほど前から姿がなく、AはBの連絡先も知らないため連絡のとれる目処が立たない
③事態を深刻に捉えたAは、事情を行政に相談した
④行政が甲の状態を確認したところ、甲には修繕が必要との結論に至った
⑤行政がBについて調査したところ、氏名は不動産登記簿から判明したが、戸籍簿や住民基本台帳には、所有者に関する記録がないため、最終的に所有者及びその親族の特定ができなかった。
⑥行政はBをすべて取り壊した
※仮に⑤の段階で、Bと連絡がつく場合には、行政庁は「戒告」と「通知」をしなければなりません。
これはあくまで私の作成した行政代執行の要件についての例で、行政代執行の流れは後ほど解説します。
また、埼玉県の行政代執行事例集がとても参考になるので、この記事を一通り読み終えたらぜひ読んでみてください。事案概要や戒告についても詳細に記載されています。
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/124019/19_zireisyuu.pdf
行政代執行の流れ
以下の流れとなります。
- 行政代執行の要件を満たしている状態の成立
- 戒告
- 通知
- 代執行の実施
- 費用の徴収
1は先に説明したので、2から解説します
戒告
行政庁が義務者に相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め義務者に文書で戒告します。
戒告には処分性があります。名あて人は取消訴訟の提起が可能です。
通知
義務者が、戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、行政庁は、代執行令書によって、代執行を行う時期、代執行に派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知します。
非常の場合又は危険切迫の場合で、戒告と通知の手続をとる暇がないときは、その手続を省略して代執行をができます。(ここは試験で出題されやすいです)
通知にも処分性があると解されています。
代執行の実施
代執行が実施されます。
代執行のため現場に派遣される執行責任者は、その者が執行責任者であることを示すべき証票を携帯し、要求があるときは、呈示しなければなりません。(呈示は要求があるときのみです。試験で出題されやすいです)
費用の徴収
行政庁が、代執行に要した費用の額とその納期日を定め、義務者に対し、文書でその納付を命じます。
代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、徴収することができます。(つまり強制徴収可能。試験で出題されやすいです)
まとめ
行政代執行は直接強制や間接強制、即時強制との違いがつかなくなりがちです。
単にテキストを読むだけでなく、都道府県や市の公開している実例を見ると理解が深まるので、簡単にでいいので調べてみることをおすすめします。
この記事が、試験対策の一助になることを願ってやみません。