行政法を学ぶ前に、原則を知っておくと理解がより深まります。
行政法の原則は、行政活動が適法かつ適切に行われるための基本的なルールです。
これらの原則は、国民の権利と自由を保護し、行政の恣意的な運用を防ぐ役割を果たしています。特に重要な原則をこれから解説します。
1. 法律による行政の原理
これは行政法の最も重要な基本原則であり、行政活動は法律に基づいて行われなければならないという原則です。これはさらに以下の3つの原則に分けられます。
法律の優位の原則
行政活動は、法律に抵触してはならないという原則です。法律が存在する場合、行政はそれに拘束されます。
法律の留保の原則
一定の行政活動は、法律の根拠がなければ行うことができないという原則です。具体的にどのような場合に法律の根拠が必要かについては、学説に対立がありますが、一般的には、国民の権利義務を新たに形成する場合や、国民の自由を制限するような権力的な行政活動を行う場合には、法律の根拠が必要とされています。
法律の法規創造力
国民の権利義務に関する法規範は、国会が制定する法律によってのみ創設することができるという原則です。
2. 法の一般原則
法律による行政の原理を具体化し、行政活動の適正を確保するための原則群です。
平等原則
法の下の平等を行政活動に適用する原則です。合理的な理由なく、特定の個人や集団を差別的に扱ってはなりません。
比例原則
行政活動は、目的と手段の間に合理的な均衡が保たれていなければならないという原則です。行政目的を達成するために必要な範囲を超えた過度な手段を用いてはなりません。
誠実信義の原則
行政は、国民の信頼を裏切るような行為をしてはならないという原則です。過去の言動と矛盾するような行為や、不誠実な行為は許されません。
権利濫用禁止の原則
行政権を濫用してはならないという原則です。形式的には適法であっても、実質的に不当な目的で行使された場合は違法となります。
手続保障の原則
行政活動は、公正な手続の下で行われなければならないという原則です。当事者には意見を述べる機会が与えられ、行政は十分な審理を行わなければなりません。
3. 適正手続の原理
行政手続法に具体的に規定されている原則で、行政が意思決定を行う際の手続きの公正性、透明性を確保するためのものです。
申請に対する応答義務
国民からの申請に対して、行政は適切に応答する義務を負います。
聴聞・弁明の機会の付与
不利益処分を行う場合には、事前に当事者に意見を述べる機会を与えなければなりません。
理由提示義務: 不利益処分を行う場合には、その理由を提示しなければなりません。
4. 司法審査の原理
行政活動が適法に行われているかどうかを司法が審査する原則です。国民は、行政活動によって権利を侵害された場合、裁判所に訴えを提起して救済を求めることができます。
これらの原則の重要性
これらの原則は、行政権の濫用を防止し、国民の権利と自由を保障するために不可欠です。
行政はこれらの原則を遵守することで、国民からの信頼を得て、円滑な行政運営を行うことができます。