コラム 刑法解説

【絶対にするな】一発で死刑になる外患誘致罪

法定刑が死刑のみで、日本において最も重大な刑事罰となる「外患誘致罪(がいかんゆうちざい)」について、詳しく解説します。

1. 外患誘致罪とは?

外患誘致罪は、日本国の存立を危うくする極めて重大な犯罪であり、刑法第81条に規定されています。具体的には、「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者」 に適用され、法定刑は死刑のみと定められています。

刑法第81条 外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。

2. 成立要件

外患誘致罪が成立するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 外国と通謀すること: 「通謀」とは、意思を通じ合うこと、つまり外国と共謀することを意味します。単に外国と連絡を取るだけでは足りず、武力行使について具体的な計画や意思疎通があることが必要です。
  • 日本国に対し武力を行使させること: 外国が日本国に対して、軍事力を行使することです。実際に武力行使が開始されることが必要であり、その準備行為だけでは、原則として本罪は成立しません(ただし、後述する予備罪・陰謀罪が成立する可能性があります)。
  • 主体: この罪の主体に制限はありません。つまり、誰でも犯罪主体になり得ます。

3. 法定刑

外患誘致罪の法定刑は「死刑」のみです。他の刑罰(懲役刑など)は規定されておらず、裁判所が死刑以外の刑を科すことはできません。これは、国家の存立を脅かす最も重大な犯罪であると考えられているためです。

4. 外患罪

刑法第2編第2章「外患に関する罪」には、外患誘致罪以外にも、以下の犯罪が規定されています。これらは総称して「外患罪」と呼ばれます。

  • 外患援助罪(刑法82条): 日本国に対して外国から武力行使があったときに、外国軍に加担して、軍務に服したり、その他の軍事上の利益を与えたりする行為。法定刑は死刑または無期もしくは2年以上の懲役。
  • 予備罪・陰謀罪(刑法88条): 外患誘致罪、外患援助罪を実行するために、予備行為(準備行為)や陰謀(共謀)をした場合に成立します。法定刑は1年以上10年以下の懲役。

5. 適用例

外患誘致罪は、日本の歴史上、適用例がありません(2024年3月現在)。これは、本罪が国家の存立に関わる極めて重大な犯罪であり、その成立要件も厳格であるためです。

6. 関連する論点

  • 共謀罪との関係: 外患誘致罪などの重大な犯罪の計画を共謀した段階で処罰する「共謀罪」(テロ等準備罪)との関連性が議論されることがあります。
  • 死刑制度との関係: 外患誘致罪は法定刑が死刑のみであることから、死刑制度廃止論との関連で議論されることがあります。

7. まとめ

外患誘致罪は、外国と共謀して日本国に武力を行使させるという、国家の存立を脅かす最も重大な犯罪です。法定刑は死刑のみであり、日本の刑法の中でも最も重い刑罰が定められています。しかし、その厳格な成立要件ゆえに、これまで適用例はありません。

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