行政法解説

【地方自治法】会計管理者について解説 地方自治体の金庫番

地方自治体の会計管理者について、わかりやすく詳しく解説します。

1. 会計管理者とは

会計管理者とは、地方自治体の会計事務をつかさどる、「地方自治体の金庫番」 と呼ばれる重要な役職です。

地方自治法第168条に基づき、すべての普通地方公共団体(都道府県、市町村、特別区)に必ず設置されます。

2. 会計管理者の職務

会計管理者は、主に以下のような職務を行います(地方自治法第170条、第171条、地方自治法施行令第125条)。

  • 現金の出納及び保管:
    • 歳入の収納、歳出の支払
    • 現金や有価証券の保管
    • 小切手の振り出し
    • 指定金融機関等との連絡調整
  • 決算の調製:
    • 決算の調製を行い、証書類、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調書を作成して、8月31日までに市町村長に提出する。(地方自治法第233条第1項)
  • その他:
    • 収入や支出の審査
    • 公金の運用
    • 財産記録の管理

簡単に言うと、自治体の収入・支出の管理、現金の保管、決算の作成など、お金に関するあらゆる業務を担当します。

3. 会計管理者の設置形態

会計管理者は、従来、市町村長の補助機関である職員が任命されていました。

しかし、2020年4月1日に改正地方自治法が施行され、会計管理者は、一般職の「特別職化」となり、首長(都道府県知事、市町村長)の補助機関ではなくなりました。

3-1. 会計管理者の身分

  • 一般職の特別職: 一般職ではありますが、他の職員とは異なる独立した地位と権限を有します。地方公務員法上の「特別職」とは定義が異なるため注意が必要です。
  • 非独立性: 独立した機関ではなく、あくまでも執行機関の一員です。監査委員のように独立した「執行機関」ではありません。

4. 会計管理者の任命

会計管理者は、市町村長の補助職員(副市町村長、職員等)または他の普通地方公共団体の会計管理者から、市町村長が任命します(地方自治法第168条第4項)。

  • 市町村長の補助職員から選任
  • 他の普通地方公共団体の会計管理者から選任

5. 会計管理者の権限

会計管理者は、その職務を遂行するために、以下のような権限を有します。

  • 独立性: 会計事務に関しては、市町村長から独立して職務を行います。
  • 拒否権: 違法または不当な支出命令に対しては、支払いを拒否することができます。
  • 検査権: 会計事務の執行状況を検査することができます。

6. 会計管理者と出納長の違い

2020年の地方自治法改正前は、「出納長」という役職が存在していました。

会計管理者と出納長は、どちらも地方自治体の会計事務を担当する役職でしたが、以下のような違いがありました。

  • 出納長: 市町村長の補助機関であり、市町村長が任命していました。
  • 会計管理者: 市町村長の補助機関ではなくなり、一般職の特別職となりました。

2020年の法改正により、出納長の職は廃止され、会計管理者に一本化されました。

7. 会計管理者の責任

会計管理者は、その職務の遂行について、重大な責任を負います。

  • 善管注意義務: 善良なる管理者の注意をもって職務を行う義務があります。
  • 損害賠償責任: 故意または過失により、自治体に損害を与えた場合は、損害賠償責任を負います。

8. 会計管理者を補佐する職員

会計管理者の職務を補佐するため、「会計職員」 が置かれます(地方自治法第171条)。

会計職員は、会計管理者の命を受けて、現金の出納保管などの事務を行います。

9. まとめ

  • 会計管理者は、地方自治体の会計事務をつかさどる重要な役職。
  • 2020年の地方自治法改正により、一般職の特別職となり、市町村長の補助機関ではなくなった。
  • 現金の出納保管、決算の調製、会計事務の審査などの職務を行う。
  • 違法・不当な支出命令に対する拒否権などの権限を有する。
  • 職務の遂行について、重大な責任を負う。

会計管理者は、地方自治体の財政運営の適正を確保し、住民の信頼を守るために、極めて重要な役割を担っています。

特に、近年、地方自治体の財政状況が厳しさを増す中で、その重要性はますます高まっています。

-行政法解説
-

© 2024 サムライ法律ノート