行政法解説

【行政手続法】届出についてわかりやすく解説

行政手続法における「届出」について、詳しく解説します。

1. 届出とは

行政手続法における「届出」とは、法令に基づき、行政機関に対して一定の事項を通知する行為であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(申請に対する「許可」等の処分を求めることとなる申請は含まれない)を言います(行政手続法第2条第7号)。

簡単に言うと、「法律で義務付けられている、行政機関への情報提供」 であり、「許可」などの行政の判断は伴いません

2. 届出の特徴

  • 義務: 法律によって義務付けられている行為です。
  • 情報提供: 行政機関に特定の情報を提供することが目的です。
  • 行政の判断なし: 届出に対して、行政機関は「許可」や「不許可」といった判断を下しません。
  • 形式的要件: 法律で定められた形式的な要件を満たしていれば、行政機関は届出を受理しなければなりません。
  • 到達主義: 届出が行政機関の事務所に到達した時点で、届出の義務が履行されたことになります(行政手続法第37条)。
  • 複数の宛先が定められている場合の特例: 法律によって複数の行政機関に届出をしなければならない場合、そのうちの一つの行政機関に到達した時点で、届出の義務が履行されたことになります(行政手続法第38条)。

3. 申請との違い

届出とよく似た言葉に「申請」があります。両者の違いは以下の通りです。

届出申請
定義法令に基づき行政機関に対して一定の事項を通知する行為(義務)法令に基づき、許可、認可、免許など、自己に対し何らかの利益を付与する行為を求める行為
目的行政機関への情報提供行政機関からの利益の付与
行政の判断不要必要
建築基準法に基づく建築工事届、風営法に基づく営業開始の届出飲食店の営業許可申請、建築確認申請

4. 届出が受理される要件

行政手続法第37条は、「届出が届出書の記載事項に不備がないこと、必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合」には、行政機関は届出を受理しなければならないと定めています。つまり、以下の要件を満たす必要があります。

  • 届出書の記載事項に不備がないこと: 氏名、住所、届出内容など、必要な情報が正確に記載されていること。
  • 必要な書類が添付されていること: 法令で定められた添付書類が揃っていること。
  • その他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合していること: 提出先、提出方法など、法令で定められた形式的な要件を満たしていること。

5. 届出がなされたものとみなされる場合

行政手続法第37条によると、届出が上記の形式的要件に適合していれば、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出がなされたものとみなされ、届出義務は履行されたことになります。

例:

  • 郵送で届出書を提出した場合、行政機関に郵便物が到着した時点。
  • 直接窓口に提出した場合、窓口の職員が届出書を受け取った時点。

6. 届出の具体例

  • 建築基準法に基づく建築工事届: 建築物を建築しようとする場合、工事着手前に建築主事又は指定確認検査機関に提出する必要があります。
  • 風営法に基づく営業開始の届出: 風俗営業を営もうとする者は、営業開始前に公安委員会に届出を行う必要があります。
  • **食品衛生法に基づく営業の届出:**飲食店営業等、政令で定められた34業種について、2021年6月1日から営業許可の対象となっていない営業者は、保健所への届出が必要となりました。
  • 道路交通法に基づく安全運転管理者の選任の届出: 一定台数以上の自動車を使用する事業所は、安全運転管理者を選任し、公安委員会に届け出る必要があります。
  • 出生届: 子どもが生まれた場合、出生の日から14日以内に出生地の市町村長に届け出る必要があります。
  • 死亡届: 人が死亡した場合、死亡の事実を知った日から7日以内に死亡地の市町村長に届け出る必要があります。
  • 婚姻届: 婚姻をしようとする場合、当事者双方と証人2人による署名押印の上、市区町村役場の戸籍係に提出する必要があります。
  • 転出届・転入届・転居届: 住所を変更する場合、市区町村役場に届け出る必要があります。

7. まとめ

行政手続法における「届出」は、法令に基づき、行政機関に対して一定の事項を通知する行為であり、行政の判断を伴わない点が「申請」と大きく異なります。

届出は、法令で定められた形式的な要件を満たしていれば、行政機関は受理しなければならず、届出が行政機関に到達した時点で、届出の義務が履行されたことになります。

行政手続法の「届出」は、行政運営の適正さと透明性を確保し、国民の権利利益を保護するために重要な役割を果たしています。

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