民法解説

【民法】普通養子縁組と特別養子縁組の違いについて解説

普通養子縁組と特別養子縁組は、どちらも血縁関係のない子どもを自分の子として迎え入れる制度ですが、目的や要件、効果などに大きな違いがあります。以下、それぞれの制度について詳しく解説します。

1. 普通養子縁組

普通養子縁組の目的

  • 家督相続や祭祀の承継: かつては「家」の存続を目的として利用されることが多かった制度です。
  • 子どもの福祉: 現在では、子どもの福祉を目的とした利用も増えています。
  • 親族間の扶養: 親族間の扶養を目的として利用されることもあります。

普通養子縁組の要件

  • 年齢:
    • 養親: 成年者であること。ただし、夫婦の一方が既に養子と特別養子縁組をしている場合は、もう一方の配偶者は20歳以上であれば足ります。
    • 養子: 養親より年少であること(尊属や年長者は養子にできません)。
  • 婚姻:
    • 養親が既婚者の場合、原則として夫婦共同で養子縁組をする必要があります。ただし、夫婦の一方が他方の嫡出子を養子とする場合や、他方が意思表示できない場合は、単独で養子縁組をすることができます。
  • 同意:
    • 養親となる者の同意
    • 養子となる者の同意(養子が15歳未満の場合は、法定代理人(通常は実親)の承諾が必要)
    • 養子が未成年者の場合、家庭裁判所の許可が必要(自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合は不要)
    • 養親となる者が既婚者の場合、配偶者の同意が必要(配偶者と共に養親となる場合や、配偶者が意思表示できない場合を除く)

普通養子縁組の効果

  • 親子関係: 養子縁組の日から、養親と養子の間に法律上の親子関係が発生します。
  • 実親との関係: 実親との親子関係は継続します。
  • 相続: 養子は、養親と実親の双方の相続人となります。
  • 戸籍: 養親の戸籍に入籍します。養子の氏(苗字)は原則として養親の氏に変更されますが、婚姻によって氏を改めた者が養子となる場合など、一定の場合には、養子縁組前の氏を称することもあります。

普通養子縁組の離縁

  • 協議離縁: 養親と養子(養子が15歳未満の場合は、離縁後の法定代理人)の協議により離縁できます。
  • 裁判離縁: 一定の要件を満たす場合、家庭裁判所に離縁を請求できます。

2. 特別養子縁組

特別養子縁組の目的:

子どもの健全な育成を図るため、実親との法的な親子関係を消滅させ、安定した家庭環境で養育されることを目的としています。

特別養子縁組の要件:

  • 年齢:
    • 養親: 原則として、配偶者がいる25歳以上の者。ただし、夫婦の一方が25歳以上であれば、他方は20歳以上であれば足ります。
    • 養子: 原則として15歳未満。ただし、15歳に達する前から引き続き養親候補者に監護されている場合には、18歳未満まで申立て可能です。
  • 婚姻: 養親は配偶者がいることが必須です。原則として夫婦共同で養子縁組をする必要があります。
  • 養子になることの利益: 養子となる者の利益のために特に必要があると認められることが必要です。
  • 試験養育期間: 原則として、6か月以上の試験的な養育期間(監護期間)が必要です。
  • 実親の同意: 原則として、実親の同意が必要です。ただし、実親がその意思を表示することができない場合や、実親による虐待など養子となる者の利益を著しく害する事情がある場合は、実親の同意は不要です。
  • 家庭裁判所の審判: 家庭裁判所の審判によって成立します。

特別養子縁組の効果

  • 親子関係: 審判確定の日から、養親と養子の間に法律上の親子関係が発生します。
  • 実親との関係: 実親との法的な親子関係は消滅します。
  • 相続: 養子は養親の相続人となりますが、実親の相続人とはなりません
  • 戸籍: 養親の戸籍に入籍し、戸籍の表記は実子と同じ(「長男」「長女」など)になります。実親の戸籍から除籍され、続柄欄には、「長男」や「長女」等と、実子と同様に記載され、養子であることは記載されません。

特別養子縁組離縁

原則として離縁はできません

ただし、養子、実父母又は検察官の請求により、養親による虐待などの一定の事由があり、かつ、実父母が相当の監護をすることができる場合などで、子の利益のために特に必要があると認められる場合に限り、家庭裁判所の審判によって離縁することができます。

3. 普通養子縁組と特別養子縁組の比較表

項目普通養子縁組特別養子縁組
目的家督相続、祭祀承継、子どもの福祉、親族間の扶養など子どもの福祉
養親の年齢成年者原則25歳以上(夫婦の一方が25歳以上であれば他方は20歳以上)
養子の年齢養親より年少原則15歳未満(例外あり)
婚姻既婚者は原則夫婦共同配偶者がいることが必須、夫婦共同
実親との関係継続消滅
相続養親・実親双方の相続人養親の相続人のみ
戸籍養親の戸籍に入籍養親の戸籍に入籍、実子と同様の記載
離縁協議離縁・裁判離縁原則不可(例外あり)
家庭裁判所の関与未成年者を養子とする場合などに許可が必要成立に審判が必要
試験養育期間不要原則として必要(6か月以上)
実親の同意原則として必要原則として必要(例外あり)

4. まとめ

  • 普通養子縁組: 比較的緩やかな要件で成立し、実親との関係も継続するため、柔軟な親子関係を築くことができます。
  • 特別養子縁組: 子どもの福祉を最優先に考えた制度であり、実親との関係を完全に断ち切り、実子と同様の安定した親子関係を築くことができます。

-民法解説
-

© 2024 サムライ法律ノート