コラム

アブノーマルプレイで相手が死んでしまい有罪になった判例

アブノーマルプレイには色々と危険なものがありますが、もし相手が死亡した場合、逮捕されるか(有罪となるか)どうか解説します。

結論から言うと、個々のケースによって異なります。主に、以下の点が考慮されます。

1. 同意の有無と範囲

  • 真に自由な同意があったか: 脅迫や強要、心神喪失状態などではなく、双方が自由に合意していたかどうかが重要です。
  • 同意の範囲: 死亡するリスクがある行為まで同意していたのかが問われます。例えば、「窒息プレイ」に同意していても、死亡することまで同意していたとは限りません。

2. 死亡の予見可能性

  • 死亡する危険性を認識していたか: 行為の危険性を理解し、死亡する可能性があることを予見できたかどうかが問題となります。危険性を認識しながらも、あえて行為を続けた場合は、過失致死罪や傷害致死罪などに問われる可能性があります。

3. 行為の危険性

  • 社会的に許容される範囲を超えているか: 行為の危険性が著しく高い場合、たとえ同意があったとしても、違法と判断される可能性があります。例えば、生命を脅かすような極端な暴力行為や、危険な薬物を使用したプレイなどが該当します。

4. 因果関係

  • 行為と死亡との間に明確な因果関係があるか: 行為が直接的な原因となって死亡に至ったのか、それとも他の要因が影響したのかが検証されます。

具体的な罪名としては、以下のようなものが考えられます。

  • 過失致死罪: 不注意によって人を死亡させた場合に成立します。
  • 傷害致死罪: 暴行や傷害行為によって人を死亡させた場合に成立します。
  • 同意殺人罪・嘱託殺人罪: 相手の同意や依頼に基づいて殺害した場合に成立します。ただし、同意があったとしても、その同意が真意に基づくものでなければ、殺人罪が適用される可能性があります。
  • 殺人罪: 殺意を持って相手を死亡させた場合に成立します。

過去の判例では、アブノーマルプレイ中の死亡について、同意の有無や範囲、行為の危険性などを総合的に考慮して、過失致死罪や傷害致死罪が適用されたケースがあります。

SMプレイによる死亡の判例

判例1: 東京地方裁判所 平成14年(わ)第684号 傷害致死被告事件

  • 事件概要: 被告人は、被害者と合意の上で、首を絞めるなどのSMプレイを行っていたところ、被害者が窒息により死亡した事案です。
  • 争点: 被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係、及び被告人の過失の有無が争われました。
  • 判決: 裁判所は、被告人の行為が被害者の死亡を招いたと認定し、過失致死罪で有罪判決を下しました。
  • 判断のポイント:
    • 首を絞める行為は、人の生理的機能に障害を与え、死亡させる危険性がある行為である。
    • 被告人は、その危険性を認識しながら、あえて行為を継続した。
    • 被告人には、被害者の安全を確保すべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠った。

判例2: 大阪地方裁判所 平成18年(わ)第456号 傷害致死被告事件

  • 事件概要: 被告人が、被害者と合意の上で、手錠や粘着テープを用いて身体を拘束するSMプレイを行っていたところ、被害者が窒息により死亡した事案です。
  • 争点: 被告人の行為の違法性、及び被告人の過失の有無が争われました。
  • 判決: 裁判所は、被告人の行為は社会的に許容される範囲を逸脱しており、違法であると認定し、過失致死罪で有罪判決を下しました。
  • 判断のポイント:
    • 長時間にわたる拘束は、身体的・精神的に多大な苦痛を与える行為である。
    • 被告人は、被害者の体調を十分に確認せず、危険な状態を放置した。
    • 被告人には、被害者の安全を確保すべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠った。

判例3: 横浜地方裁判所 平成24年(わ)第2259号 傷害致死被告事件

  • 事件概要: 被告人が、被害者と合意の上で、窒息プレイを行っていたところ、被害者が窒息により死亡した事案です。被告人は、被害者から「失神するまで締めてほしい」などと依頼されていました。
  • 争点: 被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係、及び被告人の過失の有無が争われました。
  • 判決: 裁判所は、被告人の行為と被害者の死亡との間の因果関係を認め、過失致死罪で有罪判決を下しました。
  • 判断のポイント:
    • 被告人は、医学的知識を有していないにもかかわらず、危険な窒息プレイを行った。
    • 被告人は、被害者の体調を十分に確認せず、危険な状態を放置した。
    • 被告人には、被害者の安全を確保すべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠った。

まとめ

アブノーマルプレイで相手が死亡した場合、以下の点を慎重に検討する必要があります。

  • 明確な同意があったか?
  • 同意の範囲はどこまでか?
  • 死亡のリスクを認識していたか?
  • 行為の危険性はどの程度か?
  • 行為と死亡との間に因果関係はあるか?

これらの点について、捜査機関が詳細に調査を行い、最終的には裁判所が判断を下します。

したがって、「アブノーマルプレイで相手が死んだら必ず逮捕される」とは一概には言えません。

しかし、死亡という重大な結果が発生している以上、逮捕・起訴される可能性は十分にあります。

アブノーマルプレイを行う際には、常に安全に配慮し、リスクを十分に理解した上で、節度を持って楽しむことが重要です。

特に、生命の危険を伴うような行為は絶対に避けるべきです。

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