行政法解説

【行政法】公定力や不可争力など行政処分の特殊な効力について解説

行政処分が持つ特殊な効力について、詳しく解説します。行政処分は、国民の権利義務に直接的な影響を与える行政庁の行為であり、通常の法律行為とは異なる特殊な効力を持っています。主な特殊な効力は以下の4つです。

1 公定力

行政処分は、たとえ違法な点があったとしても、権限のある機関(行政庁自身または裁判所)によって取り消されるまでは、一応有効なものとして扱われる効力です。これを公定力といいます。

具体例: 例えば、税務署が誤って過大な税額の納税通知書を送付した場合、その通知書が取り消されるまでは、納税者はその金額を納める義務を負います。不服がある場合は、不服申立てや取消訴訟などの法的手続きを通じて争う必要があります。

根拠: 公定力の根拠は、行政の円滑な運営と法的安定性の確保にあります。もし、私人(国民)が自由に行政処分の有効性を判断できるとすると、行政運営に混乱が生じ、法的安定性が損なわれてしまいます。

注意点: 重大かつ明白な瑕疵がある行政処分は、当然に無効とされ、公定力は働きません。

例えば、明らかに権限のない者が行った処分などは、当然無効となります。

2 不可争力

意義: 一定の期間が経過すると、行政処分に対して不服申立てや取消訴訟をすることができなくなる効力です。これを不可争力といいます。

具体例: 例えば、建築確認処分に対して、一定期間内(通常は3ヶ月以内)に不服申立てや取消訴訟を提起しなかった場合、その後は当該処分を争うことができなくなります。

根拠: 不可争力の根拠は、法的安定性の確保にあります。いつまでも行政処分を争うことができるとすると、法的状態が不安定になり、国民生活や社会経済活動に支障が生じる可能性があります。

期間の起算点: 不可争力の期間は、原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算されます。

教示: 行政庁は、処分を行う際に、不服申立ての方法や期間などを教示する義務があります。これを教示といいます。教示が不十分だった場合、不服申立て期間が延長される場合があります。

3 不可変更力

意義: 行政庁は、いったん行った行政処分を、自由に変更または撤回することができない効力です。これを不可変更力といいます。

具体例: 例えば、営業許可処分を行った後、特別な理由がない限り、行政庁は勝手にその許可を取り消すことはできません。

根拠: 不可変更力の根拠は、行政の自己拘束と相手方の信頼保護にあります。行政庁が自由に処分を変更できるとすると、行政に対する国民の信頼が損なわれてしまいます。

例外: 法律の根拠がある場合や、公益上の重大な必要性がある場合、または相手方の同意がある場合などには、行政処分を変更または撤回することが認められます。

4 自力執行力

意義: 行政庁は、裁判所の判決を待つことなく、自らの権限で行政処分を執行することができる効力です。これを自力執行力といいます。

具体例: 例えば、違反建築物に対して、行政庁は裁判所の許可を得ずに強制的に取り壊しを行うことができます。

根拠: 自力執行力の根拠は、行政目的の迅速かつ確実な実現にあります。もし、すべての行政処分について裁判所の判決が必要だとすると、行政運営が著しく遅延してしまう可能性があります。

法律の根拠: 自力執行力は、法律の根拠に基づいて行使されなければなりません。

行政代執行: 自力執行の典型的な例として、行政代執行があります。これは、義務者が行政上の義務を履行しない場合に、行政庁が自らまたは第三者を使ってその義務を履行し、その費用を義務者から徴収する制度です。

まとめ

これらの特殊な効力は、行政処分が持つ独特の性質であり、行政法を理解する上で非常に重要です。これらの効力によって、行政運営の円滑化と法的安定性が確保されています。

-行政法解説
-

© 2024 サムライ法律ノート