行政法解説

【行訴法】執行停止と内閣総理大臣の異議について解説

執行不停止の原則

処分の取消訴訟を提起しても、原則として処分の効力と処分の執行は停止されず、手続きは進められていきます。(行訴法25条第1項)

これは行政活動の停滞を防ぎ、行政目的を円滑に実現するためです。

これを執行不停止の原則といいます。

ですが、取消訴訟が終了するまでの間に国民の利益が侵害されることは珍しくありません。

その場合の救済措置として、執行停止制度が設けられています。

「緊急的な場合の処分一時ストップ」が執行停止です。

執行停止の要件

執行停止をするには、緊急性が要求され、要件は積極要件と消極要件に分けられます

積極要件は、

①取消訴訟が係属していること

②処分、処分の執行または手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があること(25条2項)

消極要件は、

①公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと(25条4項)

②本案について理由がないとみえないこと(25条4項)

たとえば、国が原発の設置許可をしたことに対して、周辺住民

3 執行停止の効果

処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部が停止されます。

ただし、処分の効力の停止は、処分の執行または手続の続行の停止によって目的を達することができる場合にはできません(25条2項ただし書)

4 即時抗告

執行停止の申立てに対する決定に対し不服のある者は、即時抗告をすることができます。(25条7項)※5

5 事情変更による執行停止の取消し

執行停止の決定の確定したのちに、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、裁判所は、相手方(行政庁)の申立てにより、決定をもって、執行停止の決定を取り消すことができます。(26条1項)

6 内閣総理大臣の異議

執行停止の申立てがあったとき、内閣総理大臣は、裁判所に対し異議を申し立てることができます。(27条1項)

異議は、執行停止の決定後であっても述べることができます。(27条1項)

もっとも、やむを得ない場合でなければ異議を述べてはなりません。(27条6項)

内閣総理大臣の異議があったとき、裁判所は、執行停止の決定前であれば、執行停止をすることはできず、すでに執行停止の決定をしているときは、取り消さなければなりません。(27条4項)※4

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