日本国憲法第70条は
「内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。」
と定めています。
ここでいう「内閣総理大臣が欠けたとき」とは何を指すのか、司法試験で問われていたので解説します。
憲法第70条の意義
憲法70条は、内閣の組織と運営における重要な規定であり、内閣総理大臣の欠缺や総選挙後の政治の空白を防ぎ、国民の意思を反映した政治を実現するために重要な役割を果たしています。
内閣総理大臣が欠けたときは総辞職
内閣総理大臣が死亡、辞任、または議員資格を失うなどによって欠けた場合、内閣は総辞職しなければなりません。これは、内閣は内閣総理大臣を首長とする合議体であり、その中心となる人物が欠けた場合には、内閣としての機能を維持することが困難になるためです。
「欠けたとき」に病欠は含まれません。
具体的な例
- 2020年9月、安倍晋三首相の辞任に伴い、内閣は総辞職しました(70条の「内閣総理大臣が欠けたとき」に該当)。
- 衆議院議員総選挙が行われた後は、必ず内閣総辞職が行われます(70条の「衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったとき」に該当)。
なぜ総辞職が必要なのか?
これらの場合に内閣が総辞職するのは、以下の理由からです。
- 内閣の統一性と責任: 内閣は内閣総理大臣を首長とする合議体であり、内閣総理大臣が欠けた場合、内閣としての意思決定や責任の所在が曖昧になり、行政運営に支障をきたす可能性があります。
- 国民の意思の反映: 総選挙は国民の意思を直接的に反映する機会であり、総選挙の結果、議会の勢力図が大きく変わることもあります。そのため、総選挙後に改めて内閣を組織することで、国民の意思を政治に反映させる必要があります。
- 政治の安定と円滑な運営: 内閣が総辞職することで、新内閣の組閣という形で政治の刷新が行われ、政治の安定と円滑な運営が図られます。
憲法70条と関連する条文
- 憲法69条: 内閣不信任決議が可決された場合、または信任決議が否決された場合の内閣の対応について規定しています。内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければなりません。
- 憲法71条: 内閣総理大臣が欠けた後、新しい内閣総理大臣が任命されるまでの間、前任の内閣が職務を行うことを規定しています。
- 憲法67条: 内閣総理大臣の指名について規定しています。内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名され、天皇によって任命されます。