行政法判例

行政事件訴訟法 取消訴訟の原告適格(訴えの利益)判例集

行政事件訴訟法第9条 原告適格に関する判例まとめです。

私なりの要旨でまとめています。

公務員試験、行政書士試験、司法試験にお役立てください。

処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

行政事件訴訟法 第9条 原告適格

「法律上の利益を有する者」の定義

「当該処分等により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのある者」(最判昭和53年3月14日)

工事完了したら建築確認取消しの訴えの利益は失われる

建築確認は、それを受けなければ建築工事ができないという法的効果をもつにすぎないものであり、当該工事が完了したときは、確認の取消を求める訴えの利益は失われる。

判決文URL:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52704

免職された公務員が公職立候補した場合でも訴えの利益は認められる

結論:訴えの利益あり(最判昭和40年4月28日)

理由→免職された日から公職立候補による公務員身分喪失までの期間の給料請求権があるから。

判決文:免職された公務員が、免職処分の取消訴訟係属中に公職の候補者として届出をした場合、公職選挙法90条の規定により公務員たる身分を回復できなくなるが、免職された日から公職の立候補の届出により公務員身分を喪失するに至るまでの間の俸給(給料)請求権を回復する法律上の利益を有するため、訴えの利益が認められる。

判決URL:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53104

再入国不許可処分を受けた者が出国した場合訴えの利益は失われる

結論:訴えの利益なし(最判平成10年4月10日)

判決文:再入国不許可処分を受けた者が本邦から出国した場合には、当該不許可処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。

判決URL:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52551

自動車免許証優良運転者の記載が無くなった者は訴えの利益が認められる

結論:訴えの利益あり(最判平成21年2月27日)

理由→優良運転者は免許更新時に拘束時間や手数料を得できるから。

判決一部:道路交通法は、優良運転者に対しては,更新時講習の講習事項及び講習時間を,それ以外の者に対する場合より軽くする措置が執られ、その後、手数料の額も軽減されている。自動車等運転免許証の有効期間の更新に当たり,一般運転者として扱われ,優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者は,上記記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を否定されたことを理由として,これを回復するため,当該更新処分の取消しを求める訴えの利益を有する。

判決URL:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37358

生活保護処分の裁決の取消訴訟は原告の死亡で当然に終了する

朝日訴訟です。

結論→訴えの利益なし(訴訟が当然に終了し消滅する)(最大判昭和42年5月24日)

理由→生活保護受給権は相続できるものではないから

判決文抜粋→生活保護法の規定に基づき要保護者または被保護者が国から生活保護を受けるのは、単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利であつて、保護受給権とも称すべきものと解すべきである。しかし、この権利は、被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利であつて、他にこれを譲渡し得ないし(五九条参照)、相続の対象ともなり得ないというべきである。(中略)それは当該被保護者の最低限度の生活の需要を満たすことを目的とするものであつて、法の予定する目的以外に流用することを許さないものであるから、当該被保護者の死亡によつて当然消滅し、相続の対象となり得ない、と解するのが相当である。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54970

学術研究者には文化財指定解除処分の取り消しを求める訴えの利益は認められない

結論→訴えの利益なし(最判平成1年6月20日)

判決文抜粋→本件条例及び法において、文化財の学術研究者の学問研究上の利益の保護について特段の配慮をしていると解しうる規定を見出すことはできないから、そこに、学術研究者の右利益について、一般の県民あるいは国民が文化財の保存・活用から受ける利益を超えてその保護を図ろうとする趣旨を認めることはできない。文化財の価値は学術研究者の調査研究によつて明らかにされるものであり、その保存・活用のためには学術研究者の協力を得ることが不可欠であるという実情があるとしても、そのことによつて右の解釈が左右されるものではない。また、所論が掲げる各法条は、右の解釈に反する趣旨を有するものではない。したがつて、上告人らは、本件遺跡を研究の対象としてきた学術研究者であるとしても、本件史跡指定解除処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有せず、本件訴訟における原告適格を有しないといわざるをえない。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62315

自転車競技法に基づく場外車券発売施設の設置許可取消しの訴えの利益

場外車券発売施設とは、競輪場以外で車券を売る場所のことです。

これは、認められる者とそうでない者に分かれます。(最判平成21年10月15日)

訴えの利益が認められる者→著しい支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者

訴えの利益が認められない者→場外施設の周辺に居住しまたは事業を営むにすぎない者や医療施設等の利用者

を押さえておけばOKです。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=38073

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