民法の保証契約について、法律初学者の方向けにわかりやすく解説します。
私は、以下の3つの過去問集
- 公務員試験過去問集(スーパー過去問ゼミ・資格試験研究会出版)
- 行政書士試験過去問集(合格問題集&肢別過去問題集・東京リーガルマインドLEC出版)
- 司法試験過去問集(体系別短答式過去問集・早稲田経営出版)
を解いてきました。
その経験から言うと、保証は どの試験でも出題されうるので、捨ててはいけないテーマです。
試験に出やすいポイントには⚠️のマークをつけています(あくまで私の基準です)
⚠️わかりやすさ重視で書いているため、条文を平易な表現にしています。六法を参照しながらお読みください。
保証契約と保証人
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負います。(民法446条)
たとえば、Aが大家Bと賃貸借契約をし、Aの父Cが保証契約をして保証人になったとしましょう。
この場合、Aが「主たる債務者」で、大家Bが債権者となります。
Aが負っている債務は主たる債務(主債務)で、Cが負っている債務を保証債務といいます。
保証契約は、書面でしなければ効力を生じません。(民法446条2項)
保証契約の性質
保証契約には、①付従性、②随伴性、③補充性があります。
付従性
保証債務には付従性があるため、
①主たる債務が無効または取消しによって成立しないときは、保証債務は成立しません
②主たる債務が消滅すると、保証債務も消滅します
③保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮します(448条1項)➡️なので、主たる債務よりも重い保証債務を設定することはできません。逆に、主たる債務よりも軽い保証債務を設定することは可能です。これを一部保証といいます。
随伴性
主債務が移転するときは、保証債務も移転します。これを随伴性といいます。
債権者が債権を第三者に譲渡した場合、主たる債務者に通知すればよく、保証人に対して通知する必要はありません。
補充性
保証人は、催告の抗弁権と検索の抗弁権を有します。
催告の抗弁権
催告の抗弁権(民法452条)とは、債権者が保証人に対して先に請求してきた場合に、まず主たる債務者に先に請求するように主張できる権利です。
要するに、保証人は「自分よりも先に〇〇(主たる債務者)に請求してくれ」と言い返すことができるということです。
ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、催告の抗弁権は、催告の抗弁権は行使できません。
前者については簡単な理由で、破産している人間は財産の処分ができなくなるので、請求をしても意味がないからです。
検索の抗弁権
検索の抗弁権(民法453条)とは、主たる債務者に弁済の資力があることを証明して、この財産に対して先に執行するように主張できる権利です。
保証契約の成立
保証契約は、債権者と保証人の合意で成立します。
先ほどと同じ構成の例えですが、Aが大家Bと賃貸借契約をした場合、Aの父Cが保証人になるには
大家Bと父Cのみで保証契約が可能で、A(主債務者)の同意は不要です。(⚠️試験に出やすいです)
また、A(主債務者)の意思に反していても保証契約は有効に成立します。
なぜなら、保証人の存在は主たる債務者にとって利益しかなく、意思に反していても特に問題ないからです。
保証契約は、書面でなければその効力を生じません。(民法446条2項)
なぜかというと、家族や友人間で安易な保証の引き受けがされることを防ぐためです。
保証契約では、主たる債務の一部のみを保証する一部保証が可能です。
しかし、主たる債務よりも重い内容の債務を定めることはできません。
保証人の要件
債務者が保証人を立てる場合、保証人は以下の2つの要件を満たしている必要があります。(民法450条)
①制限行為能力者でないこと
②弁済をする資力を有すること
ただし、債権者が保証人を指名する場合には、上記の要件は不要で、誰でもよいことになります(民法450条但し・試験に出やすいです)
保証債務の範囲
保証債務は、主債務の元本のほか、利息、違約金、損害賠償その他主債務に従たるすべてのものを包含します。(民法447条1項)
主債務者が相殺権、取消権、解除権を持つ場合、保証人はこれらの権利の範囲で履行を拒絶することができます。(民法457条3項)
主債務または保証債務に生じた事由の効力
主たる債務について生じた事由は、保証債務にも効力が及びます。
主たる債務について時効が完成したときは、主たる債務者が時効の利益を放棄したときであっても、保証人はこれを援用して債務を免れることができます。
求償権
委託を受けないで保証人となった者にも、求償権が認められます。
保証人が保証債務を履行した場合、主たる債務について債権者が有していた権利は保証人に移転します。
したがって、主たる債務について抵当権が設定されている場合には、保証人はこれを実行できます。
保証人が、保証債務の履行によって抵当権を取得する場合には、弁済後、抵当不動産につき、代位の付記登記を済ませておく必要はありません。
連帯保証とは
連帯保証とは、保証人が主債務者と連帯して保証債務を負担する保証をいいます。
連帯保証には催告の抗弁権と検索の抗弁権がなく、債権者にとっては履行確保が簡単に(手っ取り早く)なります。
連帯保証人には、分別の利益がありません。
執筆中