民法解説

民法 担保物権 質権についてわかりやすく解説

民法の担保物件、質権について解説します。

主観ですが、質権は、公務員試験と行政書士試験では動産質について、「たまに出るテーマ」といった印象です。

ですが、質権は担保物権として便利な手段ですので、ぜひ覚えてもらいたいところです。

質権とは

質権は、譲渡可能なものに設定できる、約定担保物権です。

約定担保物権とは、当事者間の合意によって生じる担保物権をいいます。

たとえば、AがBからお金を借りるにあたって、Bは、Aが弁済できないときに備えて担保を提供してもらうとします。

そのときに、宝石のような動産や、不動産など「譲渡可能なもの」であれば、担保として提供ができます。

質権は、様々なものに利用できるという点で利便性の高い担保物権です。

質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って事故の債権の弁済を受ける権利を有する。

民法342条 質権の内容

質権の対象

質権の対象は、「譲渡することができるもの」です。

質権では、宝石や時計といった動産だけでなく、不動産(※1)、株式などの債権など、財産として価値を有するものについては広く担保に利用できます。

※1 質権は担保として提供している間そのものの利用が原則としてできなくなる側面があり、不動産においては質権より抵当権が利用されることが多いです。

なぜかというと、質権を実行するには、最終的に競売できるものである必要があるからです。

また、差し押さえが禁じられている物であっても、譲渡することは可能であることから、質権を設定することができます。

何を質権の目的物とするかによって、動産質、不動産質、権利質の3つに分かれます。

質権の成立

質権の成立要件は、債権者への目的物の引き渡しです。

質権の「引き渡し」には、占有改定は含まれません。(345条)

簡易の引渡し、指図による占有移転は含まれます。

この記事を読んでいる人は占有改定について学習済みだと思いますが、

占有改定は引き渡しの方法の一種で、譲渡人が目的物を現実に所持し、譲渡人が譲受人に対し譲渡後は譲受人のために占有する意思表示をすることにより占有を移転する方法のことです。

なぜ質権の引き渡しに占有改定が含まれないのか

なぜ占有改定は質権の引き渡しに含まれないのかというと、

占有改定では目的物が現実に移転せず、譲渡人と譲受人の意思表示のみによって占有が移転し、所有人≠占有人になるからです。

例として、AがBから100万円借りるかわりにBの時計を担保としてAに引き渡す場合、占有改定では、Bの時計はAに物理的に移動しません。BがAに「あなたのために保管します」と意思表示をすることによって占有が移転します。

質権は、例として、100万円貸したAが、Bから100万円返済されなかったときに、AがBの時計を売却することになるので、Aは時計を手元に置いておかなければなりません。Aが現実に所持していないと、Bに「返済しろ」という圧力をかけることも、返済されなかったときに売ることもできません。

だから、占有改定ではダメなのです。

質権の被担保債権の範囲

質権の被担保債権は、元本、利息、損害賠償などのほか、違約金なども含まれます。

留置権および先取特権の規定の準用

質権には、留置権と先取特権の以下の規定が準用されます。

  • 不可分性(296条)
  • 果実収取・弁済充当権(297条)
  • 善管注意義務と、その違反がある場合の消滅請求(298条1項・3項)
  • 債務者の承諾による使用収益と、その違反がある場合の消滅請求(298条2項・3項)
  • 必要費等の償還請求権(299条)
  • 被担保債権の消滅時効の進行(300条)
  • 物上代位性(304条)

転質

転質とは、質権者が、質物をさらに他人に質入れすることをいいます。(350条)

質権設定者の承諾を得て行う承諾転質と、質権設定者の承諾を得ずに行う責任転質があります。(348条)

責任転質の場合、質権者は、転質をしたことによって生じた損失について、不可抗力によるものであっても、その責任を負います。(348条)

動産質

動産質は、質権の目的物が動産である場合をいいます。

動産質は目的動産の引き渡しによって成立しますが、第三者に対する対抗要件として、質物の占有の継続が必要です。

質権では、占有を失うと、設定者以外の第三者に対しては質権に基づく返還請求をすることはできません。

第三者に質物の占有を奪われた場合には、占有回収の訴え(200条)によってのみ、質物の返還を請求することができます。(353条)

不動産質

質物の目的物が不動産である場合を不動産質といいます。

不動産質は目的不動産の引き渡しによって成立しますが、第三者対抗要件として、質権設定の登記が必要です。(177条)

質権者は不動産質権の目的物である不動産を使用・収益できますが、その反面、質権者が管理費用等を負担し(357条)、利息を請求することはできません。(358条)

不動産質の存続期間は最長10年です。(360条1項)

設定時に10年を超える期間を定めても、10年に短縮されます。(360条1項)

権利質

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注意

本記事は、記事公開時最新の法令と通説をベースに執筆しています。

解説内容に重大な誤りがあると思われる場合は、コメントフォームまたはコンタクトフォームからご指摘いただけると幸いです。

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