民法解説

民法 債権各論 賃貸借契約についてわかりやすく解説

賃貸借契約とは

賃貸借契約とは、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる契約です。(民法601条)

アパートやマンションを借りることは代表的な賃貸借契約ですので、当てはめてゆくと理解がしやすいかと思います。

賃貸借契約は諾成・双務・有償契約であり、売買契約と同様の法的性質を有します。

諾成契約のため、目的物の引き渡しは不要です。また、当事者間の合意で成立します。

民法601条は賃貸借契約の目的物を「物」としており、動産・不動産を問いません。

存続期間

賃貸借の期間は、50年を超えることができません。(604条1項)

これより長い期間を定めても50年に短縮されます。

また、更新した場合でも、その期間は50年以内でなければなりません。(604条2項)

借地借家法による存続期間

建物の所有を目的とする地上権および土地の賃借権については、借地借家法に特則があります。

借地①期間の定めなし・30年未満の期間を定めた場合
→期間は30年となる
借家1年未満の期間を定めた場合
→期間の定めのないものとみなされる(29条1項)

期間の定めのない借家契約は、いつでも解約の申し入れをすることができます。(民法617条)

賃貸人の義務

目的物を使用収益させる義務

賃貸人は、賃借人に目的物を使用収益させる義務を負います。(601条)

修繕義務

賃貸人は、目的物が使用・収益に耐えないものとなった場合には、目的物の使用・収益に必要な修繕をする義務を負います。(606条1項)

修繕義務の発生について帰責性は問題とならず、天災その他不可抗力による破損についても、修繕義務を負います。

ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によって生じた破損については、修繕義務は発生しません。(606条1項ただし)

賃借人の権利と義務

賃借人は、目的物を使用・収益する権利を有します。

賃料支払義務

賃借人は、賃貸人に対し賃料を支払う義務を負います。(601条)

賃料の支払いは後払いが原則です。目的物が動産、建物および宅地の場合は毎月末に、宅地以外の土地の場合は毎年末に支払います。(614条)ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければなりません。(614条ただし)

もっとも、支払時期について特約や慣習がある場合にはその内容によります。

実際には、翌月分を当月末に支払う等の前払いが多いです。

目的物の用法遵守義務

賃借人は、契約または目的物の性質によって定まった使用方法に従い、使用収益をしなければなりません。(616条)

賃借人は、目的物を善良な管理者の注意をもって保存しなければなりません。(善管注意義務・400条)

賃借物が修繕を要する状態にあり、または賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、賃貸人が既にこれを知っているときを除き、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければなりません。(615条)

賃貸人が、賃貸物の保存に必要な行為をしようとする場合、賃借人は拒めません。(606条2項)

賃借人が用法遵守義務に違反して賃貸目的物を滅失損傷した場合には、賃貸人に生じた損害を賠償しなければなりません。(622条)

原状回復義務

賃借人は賃貸人に対して、契約終了時に目的物を返還する義務を負います。(601条)

賃借人は、目的物を返還するにあたって、目的物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合については、附属させた物を収去する義務を負います。(622条)

また、賃借人は、目的物を返還するにあたって、目的物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合は、その損傷を原状に復する義務を負います。(621条)この義務を原状回復義務といいます。

この「損傷」に、通常の使用に伴う損耗であったり、経年劣化は含まれません。

たとえばマンションの一室を賃借した場合、カーペットの損耗や壁の汚れといった正常に生活を営むことで生じる損耗に原状回復義務は発生しません。

また、損耗が賃借人の責めに帰することのできない事由によるものであるときは、賃借人は、原状回復義務を負いません。(621条ただし)

費用の負担

賃借人は、賃貸人に対して直ちに必要費の償還を請求することができます。(608条)

必要費とは、のことで、例えばが該当します。

有益費の例としては、賃借店舗における表入口の改装工事費、飲食店舗におけるカウンターの改造、流し台の改良費用等

有益費については、賃借人は、賃貸人に対して賃貸借の終了時に、価格増加が現存するときに限り、賃貸人の選択に従い、支出金額または増加額の償還を請求することができます。(608条2項・196条2項)

また、有益費については、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができます。(608条2項ただし)

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