行政法解説

行政不服審査法 審査請求の審理手続についてわかりやすく解説①

標準審理期間

審査庁となるべき行政庁は、審査請求がその事務所に到達してから当該審査請求に対する裁決をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、当該審査庁となるべき行政庁および関係処分庁の事務所における備え付けその他の適当な方法により公にしておかなければなりません。(16条)

標準処理期間の設定は、努力義務とされています。

記述式問題での出題歴があるため、押さえておきましょう。

審査請求書の提出

審査請求は、他の法律(条例含む)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、政令で定めるところにより、審査請求書を提出してしなければなりません。(19条1項)

処分についての審査請求書には、次の事項を記載しなければなりません。

  1. 審査請求人の氏名または名称および住所または居所
  2. 審査請求に係る処分の内容
  3. 審査請求に係る処分があったことを知った年月日
  4. 審査請求の趣旨および理由
  5. 処分庁の教示の有無およびその内容
  6. 審査請求の年月日

不作為についての審査請求書には、次の事項を記載しなければなりません。

  1. 審査請求人の氏名または名称および住所または居所
  2. 当該不作為にかかる処分についての申請の内容および年月日
  3. 審査請求の年月日

口頭による審査請求

口頭で審査請求をする場合には、19条2項~5項に規定する記載事項を陳述しなければなりません。

この場合において、陳述を受けた行政庁は、その陳述の内容を録取し、これを陳述人に読み聞かせて誤りのないことを確認し、陳述人に押印させなければなりません。(20条)

処分庁等を経由する審査請求

審査請求をすべき行政庁が処分庁等と異なる場合における審査請求は、処分庁等を経由してすることができます。(21条1項)

この場合には、処分庁等は、直ちに、審査請求書または審査請求録取書を審査庁となるべき行政庁に送付しなければなりません。(21条2項)

この場合における審査請求期間の計算については、処分庁に審査請求書を提出し、または処分庁に対し当該事項を陳述した時に、処分についての審査請求があったものとみなされます。(21条3項)

審査請求の審理

審査請求書が提出されると、審査請求が適法かどうかの審理が行われます。

審査請求書の方式や記載事項に不備がある場合には、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければなりません。(23条)

審査請求人が期間内に不備を補正しないとき、または、審査請求が不適法であって補正することができないことが明らかなときは、審査庁は、審理員による審理手続を経ないで、裁決で、当該審査請求を却下することができます。(24条2項)

行政手続法では、申請が形式上の要件を欠いている場合、補正を求めるか、申請を不適法として拒否処分をしますが、行政不服審査法では、補正をすることができる場合には、補正を命じなければなりません。

審査請求が適法であれば、審査請求に理由があるかどうかの本案審理が行われます。

総代による審査請求

多数人が共同に審査請求をしようとする場合には、3人を超えない総代を五千することができます。(11条1項)。

総代が互選されたときは、共同審査請求人は総代を通じてのみ、審査請求に関する行為をし、行政庁は、通知等の行為を総代の1人にすれば足ります。(11条5項)

総代は、各自、他の審査請求人のために、審査請求に関する一切の行為をすることができます。

しかし、総代は特別の委任があっても、審査請求を取り下げることはできません。(11条3項)

代理人による審査請求

審査請求は、代理人によってもすることができます。(12条1項)

代理人は、審査請求人のために、当該審査請求に関する一切の行為をすることができます。(12条2項)

審査請求の代理人は、特別の委任があれば、審査請求の取り下げも可能です。(12条2項)

審理員の指名

審査請求がされた行政庁(審査庁)は、審査請求書が提出されたときは、審査庁に所属する職員のうちから審理手続を行う者(審理員)を指名するとともに、その旨を審査請求人および処分庁等に通知しなければなりません。(9条1項本文)

ただし、委員会等が審査庁である場合、もしくは条例に基づく処分について条例に特別の定めがある場合、または当該審査請求を却下する場合は、この限りでありません。(9条1項ただし)

審査庁は、処分に関する手続に関与した者や、審査請求人の、利害関係人などを審理員に指名することはできません。(9条2項)

審査庁となるべき行政庁は、審理員となるべき者の名簿を作成する努力義務を負い、これを作成したときは公にしておく義務を負います。(17条)

弁明書の提出

審理員は、審査庁から指名されたときは、直ちに、審査請求書または審査請求録取所の写しを処分庁等に送付しなければなりません。(29条)

ただし、処分庁等が審査庁である場合には、この限りではありません。(29条1項ただし)

審理員は、相当の期間を定めて、処分庁等に対し、弁明書の提出を求めるものとされています。

審理員は、処分庁等から弁明書の提出があったときは、これを審査請求人および参加人に送付しなければなりません。

反論書等の提出

審査請求人は、送付された弁明書に記載された事項に対する反論を記載した書面(反論書)を提出することができます。(30条1項)

参加人は、審査請求に係る事件に関する意見を記載した書面(意見書)を提出することができます。

審理員は、審査請求人から反論書の提出があったときはこれを参加人および処分庁等に、参加人から意見書の提出があったときはこれを審査請求人および処分庁等に、それぞれ送付しなければなりません。(30条3項)

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