行政法解説

行政不服審査法総説 不服申し立てとその種類についてわかりやすく解説

行政不服審査法の意義

行政不服申立てとは、行政庁の処分または不作為(ふさくい)に不服がある者が、行政庁にその再審査等、求めるための制度をいいます。

行政不服申立ての長所

  • 簡易迅速な救済が得られる
  • 費用がかからない
  • 処分の違法性だけでなく、当か不当かについても審理できる
  • 行政機関の専門的知識を活用することが可能である

行政不服申立ての短所

  • 行政側が審理を行うため、中立性に欠けることがある
  • 簡易迅速な救済なため、慎重さが欠ける
  • 裁判とは異なり偽証罪のような制裁がないため、供述の真実性の担保がなく、調査能力に限界がある

行政不服申立ての目的

1 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。

2  行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

行政不服審査法 第1条 目的等

行政不服審査法は、

  • 簡易迅速かつ公正な手続きにより国民の権利利益の救済を図ること
  • 行政の適正な運営を確保すること

を目的とします。

行政不服審査法は、不服申し立てに関する一般法であり、他の法律に特別の規定があれば、その法律が優先して適用されます。(1条2項)

不服申立ての対象

第二条 行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。

第三条 法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。

行政不服審査法 第2条 処分についての審査請求 第3条 不作為についての審査請求

行政不服審査法における処分とは、行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為をいいます。(1条2項)

「不作為」とは、法令に基づく申請に対して何らの処分もしないことをいいます。

不服申立ての種類

不服申立てには、①審査請求、②再調査の請求、③再審査請求の3種類があります。

審査請求をすべき行政庁は、条文だけを読むと難解でわかりづらく、ちんぷんかんぷんかと思います。

簡単に説明すると、

原則(個別法に特別の定めがある場合を除き)として、処分庁の最上級行政庁が審査請求先となります。

処分庁とは、処分を行った行政庁のことで、最上級行政庁とは、大臣や都道府県知事、市町村長等のことです。

ただし、次の場合には、それぞれに記載する行政庁が審査請求先となります。

処分庁に上級行政庁がない場合→処分庁が審査請求先となります。

処分庁の上級行政庁が主任の大臣や外局として置かれる庁の長等である場合→その大臣や庁の長等が審査請求先となります。

第四条 審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとする。

 処分庁等(処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合又は処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する庁の長である場合 当該処分庁等

 宮内庁長官又は内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合 宮内庁長官又は当該庁の長

 主任の大臣が処分庁等の上級行政庁である場合(前二号に掲げる場合を除く。) 当該主任の大臣

 前三号に掲げる場合以外の場合 当該処分庁等の最上級行政庁

行政不服審査法 第4条 審査請求をすべき行政庁

再調査の請求

処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができます。(5条1項)

ただし、当該処分について審査請求をしたときは、再調査の請求をすることはできません。(5条1項ただし)

再調査の請求をしたときは、それについての決定を経た後でなければ、審査請求をすることはできません。(5条2項)

ただし、以下のいずれかに該当する場合は、直ちに審査請求をすることができます。(5条2項ただし)

  1. 当該処分につき再調査の請求をした日の翌日から起算して3月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
  2. その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合

再審査請求

行政庁の処分につき法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合には、当該処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、再審査請求をすることができます。(6条1項)

再審査請求は、原裁決(再審査請求をすることができる処分についての審査請求の裁決)または当該処分を対象として、法律で定めた行政庁に対してするものとされます。(6条2項)

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