はじめに
賃貸借は当事者間で有償で物を貸し借りする契約類型です。典型例としては、賃貸住宅やレンタカーなどがあります。
本稿では、民法の条文、関連する判例、賃貸借契約と転貸借契約の法的定義、成立要件、当事者の権利義務、契約終了時の影響について包括的に解説します。
賃貸借契約の基本
賃貸借契約の定義と成立要件
賃貸借契約は、民法第601条にその定義が定められています。
「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。」
これは、貸主である賃貸人が借主である賃借人に対し、特定の目的物を使用し、そこから収益を得させることを約束し、これに対して賃借人が賃料を支払い、契約終了時にはその目的物を賃貸人に返還することを約束することによって効力を生じる契約です。この契約は、不動産のみならず、DVDレンタルなど、あらゆる物の貸し借りに幅広く適用される概念です。
賃貸借契約の成立には、以下の三つの要件について当事者間の合意があることが求められます。
- 賃貸人が賃借人にある物の使用及び収益をさせることを約束すること
- 賃借人がその対価として賃料を支払うことを約束すること
- 賃借人が引き渡しを受けた物を契約終了時に賃貸人に返還することを約束すること
この契約は、「有償契約」「双務契約」「諾成契約」という性質を持ちます。有償契約とは、賃料の支払いという対価が存在することを意味します。双務契約とは、賃貸人と賃借人の双方がそれぞれ義務を負うことを指し、賃貸人は目的物を使用収益させる義務を、賃借人は賃料支払いと返還義務を負うことを意味します。諾成契約とは、当事者間の合意のみで成立し、目的物の引き渡しは契約の成立要件ではないことを示します。
賃貸人と賃借人の権利と義務
賃貸人の主な権利・義務は以下の通りです。
賃貸人は、賃借人に対して賃料の支払いを請求する権利を有します。
一方で、賃貸人には賃借人に目的物を使用・収益させる義務があります。これは、賃借人が借りた目的物を適切に利用できるよう、必要な環境を整える責任を負うことを意味します。また、民法第606条に基づき、賃貸人は賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負います。ただし、修繕の必要性が賃借人の責任による場合はこの限りではありません。賃貸人が修繕に応じない場合には、賃借人が自ら修繕を行い、その費用を賃貸人に請求できる場合があります。さらに、賃借人が賃借物の価値を増加させるために支出した費用(有益費)がある場合、賃貸借契約終了時にその価値の増加が現存していれば、賃貸人はその費用または増加額のいずれかを選択して賃借人に支払う義務を負います。
賃借人の主な権利・義務は以下の通りです。
賃借人は、目的物を使用・収益させるよう賃貸人に請求する権利、修繕請求権、費用償還請求権、そして賃料減額請求権といった権利を有します。義務としては、賃料を支払う義務が最も基本的です。また、賃借人は、賃貸借契約の終了まで、借りた目的物を善良な管理者の注意をもって保管する義務(善管注意義務、民法第400条)を負います。この善管注意義務は、単なる一般的な注意義務に留まらず、賃借人の具体的な行動規範を形成する基盤となる法的原則です。この義務から、民法第615条に定められるように、修繕が必要な場合や第三者が賃借物について権利を主張する場合には、遅滞なく賃貸人に通知する義務が派生します。したがって、賃借人がこの根本的な善管注意義務を怠ることは、通知義務違反といった具体的な契約違反を引き起こし、最終的には契約解除や損害賠償といった法的責任に繋がる可能性があります。
加えて、賃借人には契約で定められた目的に従って目的物を使用する用法遵守義務があります。そして、賃貸借契約が終了し目的物を返還する際には、民法第621条に基づき原状回復義務を負います。ただし、この原状回復義務は、物件を新品同様に戻すことを意味するものではなく、通常の使用によって生じた損耗や経年変化は賃借人の負担ではありません。義務違反があった場合には、賃貸人に対する損害賠償責任が発生する可能性があります。
賃貸借契約における賃貸人と賃借人の主な権利・義務を以下の表にまとめます。
賃貸借契約の終了と敷金
賃貸借契約の終了は、契約期間の定めの有無によって異なります。期間の定めがある賃貸借契約では、契約期間満了後も賃借人が使用を継続し、賃貸人が異議を述べない場合には、契約が更新されたものとみなされます。一方、期間の定めがない賃貸借契約の場合、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができます。
敷金は、民法第622条の2に詳細が定められています。敷金とは、その名称にかかわらず、賃料債務その他賃貸借に基づいて生じる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭を指します。
賃貸人は、賃貸借契約が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたときに、賃借人の債務を差し引いた残額を返還する義務を負います。ここで重要なのは、敷金の返還と目的物の明渡しは同時履行の関係にはなく、賃借人による目的物の明渡しが先履行となるという原則です。この原則は、民法における契約の一般的な同時履行の抗弁権の原則に対する重要な例外であり、賃貸人にとって、賃借人が敷金返還を盾に目的物の明渡しを拒むことを防ぎ、不動産という重要な財産の確実な回収を保障する役割を果たしています。
賃貸借契約終了後、敷金は残存債務に当然に充当されます。また、契約期間中に賃借人が債務を履行しない場合でも、賃貸人は敷金をその債務の弁済に充当できますが、賃借人からその充当を請求することはできません。
当事者の地位の承継に関しては、賃貸人の地位が移転した場合、敷金返還義務は新賃貸人に承継されます(民法第605条の2第4項)。しかし、賃借権が譲渡された場合でも、特段の事情がない限り、敷金に関する権利義務は新賃借人に承継されないのが原則です。
転貸借契約
A. 転貸借の定義と構造
転貸借とは、所有者である賃貸人(以下「原賃貸人」と称します)から建物を借りている賃借人(以下「転貸人」と称します)が、さらにその建物を第三者(以下「転借人」と称します)に賃貸する契約関係を指します。
転貸借が行われると、法的には以下の二つの独立した契約関係が並存することになります。
- マスターリース契約(原賃貸借契約): 原賃貸人(A)と賃借人兼転貸人(B)の間で締結される最初の賃貸借契約。
- サブリース契約(転貸借契約): 賃借人兼転貸人(B)と転借人(C)の間で締結される二次的な賃貸借契約。
これら二つの契約は別個のものであるものの、相互に影響を及ぼし合う関係にあります。特に、マスターリース契約が終了した場合に、サブリース契約の効力がどのように影響を受けるかが重要な法的問題となります。
適法な転貸借の要件
転貸借が法的に有効であるためには、民法第612条第1項の規定に従い、賃貸人(原賃貸人)の承諾を得ることが必須となります。この要件は、賃貸借契約が賃貸人と賃借人の間の信頼関係を前提としているためです。
賃貸人の承諾がなければ、賃借人は賃借権を第三者に譲り渡したり、賃借物を転貸したりすることはできません。もし賃貸人の承諾を得ずに転貸(無断転貸)を行った場合、原則として賃貸人は賃貸借契約を解除することができます(民法第612条第2項)。
無断転貸とその法的効果
賃借人が賃貸人の承諾を得ずに第三者に賃借物の使用または収益をさせた場合、これを無断転貸と呼び、原則として賃貸人は賃貸借契約を解除することができます(民法第612条第2項)。
しかし、最高裁判所は、この解除権の行使には制限があるとの判断を示しています。具体的には、「賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事由があるとき」は、賃貸人は契約を解除できないとされています(最判昭和28年9月25日他)。
この「特段の事情」の有無は、諸般の事情を総合的に考慮して個別の事案ごとに判断されます 。
解除が否定される具体例としては、賃借人と転借人との間に親族関係等の特殊な人間関係がある場合(例:夫婦間の借地権譲渡、親族の無償同居) や、使用収益の実態や主体に実質的な変化がない場合(例:個人事業主の法人成り) が挙げられます。
一方、解除が肯定される具体例としては、賃借人が賃貸人に隠れて転貸料と賃料の差額を利得していた場合(特に賃料の3倍もの転貸料を収受していた事例など)や、転貸部分が物件の一部であっても、転貸により利益を得ていたことが指摘された場合があります。
「背信的行為」の有無を判断する際の具体的な要素と、それに伴う判例の具体例は、無断転貸を巡る紛争の法的帰趨を予測するための重要な手がかりを提供します。これにより、賃貸人は解除権行使の可否を、賃借人は無断転貸のリスクを、より具体的に評価することができ、紛争発生前の段階での戦略的な意思決定に役立てることが可能です。
「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」が認められる場合、無断転貸であっても適法な転貸借契約と同様の法的効果が生じると解釈され、賃貸人は賃借人に対して契約解除や明渡請求をすることができません。この場合、賃貸人は転借人に対して直接賃料を請求できるとされています。
適法な転貸借における当事者間の関係
適法な転貸借においては、原賃貸人(A)、賃借人兼転貸人(B)、転借人(C)の三者間に権利義務関係が生じます。
転借人の賃貸人に対する直接義務は、民法第613条第1項前段に規定されています。賃貸人の承諾を得て適法に転貸された場合、転借人Cは、原賃貸人Aと賃借人Bとの間の賃貸借に基づく賃借人Bの債務の範囲を限度として、原賃貸人Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負います。具体的には、転借人Cが原賃貸人Aに直接責任を負うのは、あくまで原賃借人Bの債務の範囲が限度であり、例えば、原賃貸借の賃料が10万円で転貸借の賃料が15万円の場合でも、転借人Cは原賃貸人Aに対しては10万円の範囲でしか直接義務を負いません。
賃料の前払いの対抗不能については、民法第613条第1項後段が規定しています。転借人Cは、賃料の「前払」をもって、原賃貸人Aに対抗することができません。ここでいう「前払」か否かの基準は、原賃貸借契約の賃料支払期限ではなく、転貸借契約に基づく転借料の支払期限が基準となります。ただし、転借人Cが転借料の支払期限以降に転貸人Bに賃料を支払った場合は、その支払いを原賃貸人Aに対抗することができます。これは、AのCに対する直接請求権とBのCに対する転借料請求権が「連帯債権類似の関係」にあると解されているためです。転借人が賃料の「前払い」をもって賃貸人に対抗できないという規定や、転貸人(賃借人)が転借人の損害賠償責任を連帯して負う可能性は、転貸借契約を締結する際、当事者間での綿密な契約条項の検討が不可欠である。
民法第613条第2項は、賃貸人の賃借人に対する権利行使を妨げないことを定めています。これは、原賃貸人Aが転借人Cに直接請求できるからといって、賃借人Bに対する請求権を失うわけではないことを意味します。
転借人の過失による損害賠償責任については、転借人Cの過失により賃貸物が損傷した場合、賃借人兼転貸人Bは、Cと連帯して責任を負うと解されています。ただし、転貸人Bが転借人Cの選任・監督について相当の注意を払っていた場合は、連帯責任を免れる余地もあります。
転貸借における賃借人兼転貸人(B)は、単なる中間業者ではなく、原賃貸人(A)と転借人(C)の間の橋渡し役として、法的責任とリスクの多くを負う重要な存在です。転借人の賃貸人に対する直接義務が原賃料の範囲に限定される一方で、転貸人は転借人の行為による損害に対しても連帯責任を負う可能性があり、この構造は転貸人に高いリスク管理能力を要求します。
転借人は、賃貸借契約の目的物を直接占有する者であり、賃貸人が明渡しを求める訴訟を提起する際には、被告として加える必要があります。
転貸借における各当事者(賃貸人、賃借人、転借人)の関係性・義務の概要を以下の表にまとめます。
賃貸借・転貸借契約の終了と転借人の保護
原賃貸借契約の終了が転貸借に与える影響
原賃貸借契約(マスターリース契約)が終了すると、その契約を基礎として成立している転貸借契約(サブリース契約)も原則として基礎を失い終了します。しかし、その終了原因によって転借人の地位に与える影響は異なります。
終了原因による転貸借契約への影響は以下の通りです。
- 期間満了または解約申入れによる終了
原賃貸借契約が期間満了や解約申入れによって終了した場合でも、転貸借契約は当然には終了しません。この場合、賃貸人(原賃貸人A)が転借人Cに対してその旨を通知し、通知された日から6ヶ月が経過することによって、転貸借契約が終了します。この規定は、借地借家法第34条に明確に定められています。 - 合意解除による終了
原賃貸人Aと賃借人兼転貸人Bが合意によって原賃貸借契約を解除した場合、その合意解除を原則として転借人Cに対抗することはできません(民法第613条第3項本文)。これは、合意解除が賃貸人と賃借人の自由な意思に基づくものであり、第三者である転借人の利益を不当に侵害すべきではないという考えに基づきます。ただし、合意解除の当時、賃貸人Aが賃借人Bの債務不履行による解除権を有していた場合は、この限りではありません(民法第613条第3項ただし書)。 - 賃借人の債務不履行による解除
賃借人兼転貸人Bが賃料不払いなどの債務不履行を起こし、原賃貸人Aが原賃貸借契約を解除した場合、転貸借契約は、原賃貸人Aが転借人Cに目的物の返還請求をしたときに終了します。この場合、原賃貸人は賃借人Bに催告すれば足り、転借人Cに別途支払いの機会を与える必要はないとされています。
原賃貸借契約の終了原因によって転借人の保護の程度が異なるという点は、法律が転借人を「無過失の第三者」として保護しようとする意図と、契約当事者間の信頼関係の破壊に対する賃貸人の正当な権利行使とのバランスをどのように図っているかを示しています。これは、転貸借契約が複雑な法的・社会的な利害調整の上に成り立っていることを浮き彫りにします。賃借人の債務不履行による解除の場合、原賃貸人は転借人への支払い機会を与えることなく、目的物の返還請求時に転貸借を終了させられる一方で、期間満了や解約申入れの場合は、転借人への通知と6ヶ月の猶予期間が必要です。この違いは、原賃貸人が賃貸借契約を終了させる際に、どのような原因を主張するかによって、物件回収のスピードや手続きの複雑さが大きく変わるという戦略的な意味合いを持っています。
原賃貸借契約の終了原因と転貸借契約への影響を以下の表にまとめます。
原賃貸借契約の終了原因 | 転貸借契約への影響 | 転借人の保護 |
期間満了・解約申入れ | 賃貸人からの通知後6ヶ月で終了(借地借家法34条) | あり(6ヶ月猶予) |
合意解除 | 原則として転借人に対抗できない(民法613条3項本文) | あり(原則対抗不能) |
賃借人の債務不履行による解除 | 賃貸人の返還請求時に終了 | なし(支払い機会なし) |
転借人保護の規定
転借人の保護は、特に賃貸借契約の終了時において重要な側面です。借地借家法第34条は、建物の適法な転貸借の場合において、原賃貸借が期間の満了または解約告知によって終了するときは、原賃貸人は転借人にその旨を通知しなければ、その終了を転借人に対抗できないと定めています。この通知後、転貸借は6ヶ月経過することによって終了します。これにより、転借人には新たな住居や営業場所を探すための猶予期間が与えられ、急な立ち退きから保護されます。
また、民法第613条第3項は、賃借人が適法に賃借物を転貸した場合、原賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗できないと規定しています。この原則は、原賃貸人と原賃借人の間の合意によって、転借人の権利が不当に侵害されることを防ぐためのものです。ただし、その解除の当時、原賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していた場合は、この限りではありません。
無断転貸が背信行為に当たらないと判断される例
無断転貸であっても、賃貸人との信頼関係が破壊されていないと判断される場合については、判例によって示されています。例えば、賃借人と転借人との間に親族関係等の特殊な人間関係がある場合(引揚者たる親族の一時的な収容、親族の学生を無償で同居させる場合など)や、使用収益の実態や主体に実質的な変化がない場合(個人事業主が税務対策のために法人成りし、法人が賃借物件を継続して利用するケースなど) がこれに該当します。これらの事例では、形式的には無断転貸であっても、賃貸人との信頼関係が破壊されていないと判断されています。
まとめ
以上が、民法における賃貸借契約と転貸借契約についての包括的な知識となります。
転貸借では登場人物が増え混乱しがちですが、「誰を保護するか」という視点で考えると整理がしやすくなります。
賃貸借に関する判例
- 建物収去土地明渡請求(最高裁判決 昭和28年12月18日)
対世的効力ある賃借権の妨害排除請求権
第三者に対抗できる借地権を有する者は、その土地に建物を建ててこれを使用する者に対し直接その建物の収去、土地の明渡を請求する妨害排除請求権を行使することができる。 - 借地権確認請求(最高裁判決 昭和30年04月05日)
対抗力のある賃借権と第三者に対する建物収去土地明渡請求の有無
第三者に対抗できる賃借権を有する者は、その土地に建物を有する第三者に対し、建物の収去、土地の明渡を請求することができる。 - 家屋明渡並びに損害賠償請求(最高裁判決 昭和35年06月23日)民法第613条
賃貸人の地位は賃貸物の譲渡に伴い当然に移動するか。
賃貸物の所有権が当初の賃貸人から順次移転し現在の現所有権者に帰した場合、当初の賃貸人と賃借人間の賃貸借は借家法上、現所有者に承継されたものと解すべきであるから現所有者は賃借人に本件家屋の使用収益をさせる義務を負う。- 本判例の趣旨は不動産に関しては2017年改正で新設された第605条の2に制定された。
- 第三者異議等(最高裁判決 昭和36年12月21日)民法第612条, 借地借家法第34条
賃借人の債務不履行による賃貸借解除と転貸借の終了。
賃貸借の終了によつて転貸借は当然にその効力を失うものではないが、賃借人の債務不履行により賃貸借が解除された場合には、その結果転貸人としての義務に履行不能を生じ、よつて転貸借は右賃貸借の終了と同時に終了に帰する。 - 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和37年12月25日)民法第896条
家屋賃借人の事実上の養子として待遇されていた者が賃借人の死後において家屋に居住できるとされた事例。
家屋賃借人の事実上の養子として待遇されていた者が賃借人の死後も引き続き家屋に居住する場合、賃借人の相続人らにおいて養子を遺産の事実上の承継者と認め、祖先の祭祀も同人に行わせる等(当審判決理由参照)の事情があるときは、その者は、家屋の居住につき、相続人らの賃借権を援用して賃貸人に対抗することができる。 - 建物退去土地明渡請求(最高裁判決 昭和38年02月21日)民法第454条
土地賃貸借の合意解除は地上建物の賃借人に対抗できるか。
土地賃借人と賃借人との間において土地賃貸借契約を合意解除しても、土地賃貸人は、特別の事情がないかぎり、その効果を地上建物の賃借人に対抗できない。 - 借地権確認等請求(最高裁判決 昭和43年10月08日)民法第163条
土地賃借権の時効取得
土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、土地賃借権を時効により取得することができる。 - 損害賠償請求(最高裁判決 昭和46年04月23日)民法第466条
賃貸土地の所有者がその所有権とともにする賃貸人たる地位の譲渡と賃借人の承諾の要否
賃貸借の目的となつている土地の所有者が、その所有権とともに賃貸人たる地位を他に譲渡する場合には、賃貸人の義務の移転を伴うからといつて、特段の事情のないかぎり、賃借人の承諾を必要としない。- 本判例の趣旨は不動産に関しては2017年改正で新設された第605条の2に制定された。
- 敷金返還請求(最高裁判決 昭和48年02月02日)
- 敷金の被担保債権の範囲および敷金返還請求権の発生時期
家屋賃貸借における敷金は、賃貸借終了後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当額の損害金債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得する一切の債権を担保するものであり、敷金返還請求権は、賃貸借終了後家屋明渡完了の時においてそれまでに生じた右被担保債権を控除しなお残額がある場合に、その残額につき具体的に発生するものと解すべきである。 - 家屋の賃貸借終了後におけるその所有権の移転と敷金の承継の成否
家屋の賃貸借終了後明渡前にその所有権が他に移転された場合には、敷金に関する権利義務の関係は、旧所有者と新所有者との合意のみによつては、新所有者に承継されない。 - 賃貸借終了後家屋明渡前における敷金返還請求権と転付命令
家屋の賃貸借終了後であつても、その明渡前においては、敷金返還請求権を転付命令の対象とすることはできない。
- 敷金の被担保債権の範囲および敷金返還請求権の発生時期
- 建物明渡請求(最高裁判決 昭和50年04月25日)民法第559条、民法第576条
賃借物につき第三者から明渡を求められた賃借人の賃料支払拒絶権
土地又は建物の賃借人は、賃借物に対する権利に基づき自己に対して明渡を請求することができる第三者からその明渡を求められた場合には、それ以後、賃料の支払を拒絶することができる。 - 賃借権設定仮登記抹消登記手続請求(最高裁判決 昭和52年02月17日) 民法第369条,民法第395条
競売手続が完結した場合と抵当権と同時に設定された抵当権者自身を権利者とする賃借権の帰すう
抵当不動産につき、抵当権者自身を権利者とする、賃借権又は抵当債務の不履行を停止条件とする条件付賃借権が設定され、その登記又は仮登記が抵当権設定登記と順位を前後して経由された場合において、競売申立までに対抗要件を具備した短期賃借権者が現われないまま、競落によつて第三者が当該不動産の所有権を取得したときには、特段の事情のない限り、抵当権者の賃借権は、それが短期賃借権であつても消滅する。 - 建物賃料等請求本訴、保証金返還請求反訴(最高裁判決 平成9年02月25日) 民法第612条
賃借人の債務不履行による賃貸借の解除と賃貸人の承諾のある転貸借の帰すう
賃貸借が賃借人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了する。 - 土地明渡請求事件(最高裁判決 平成16年07月13日)農地法第3条,民法第163条
農地の賃借権の時効取得と農地法3条の適用の有無
時効による農地の賃借権の取得については,農地法3条の規定の適用はない。 - 預託金返還請求事件(最高裁判決 平成17年09月08日)民法第88条2項,民法第89条2項,民法第427条,民法第896条,民法第898条,民法第899条,民法第900条,民法第907条,民法第909条
共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権の帰属と後にされた遺産分割の効力
相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない。
出典(2025年6月14日アクセス)
- 民法 e-Gov法令検索
- Wikipedia 賃貸借
- Wikibooks 民法第601条 ほか
- 転貸借のリスクを防ぐ法律関係を解説 |【CBRE】
- 事業用建物における無断転貸について(店舗における経営委託と無断転貸等) | 虎ノ門カレッジ法律事務所
- 無断転貸が背信行為に該当せず解除が無効とされた後の処理
- 一般財団法人 不動産適正取引推進機構 | 最高裁判例一覧 借地に関する判例 - 契約解除(無断譲渡・転貸・増改築・その他違約)
- 無断転貸を理由とした明渡し
- 転貸を承諾した転借人とオーナーの法律関係 - 公益社団法人 全日本不動産協会
- 【適法な転貸借の基本(民法613条・適法扱いとなる状況・効果の全体像)】 | 不動産
- 一般財団法人 不動産適正取引推進機構 賃貸住宅におけるサブリース事業 の実態と課題
- 一般財団法人 不動産適正取引推進機構 | RETIO判例検索システム